「藤崎さん、大変だ! 明日朝一番の役員会議で使うプレゼン資料、取引先から急遽仕様変更の連絡が入った! 今日のデータ、全部差し替えだ!」
先輩社員の悲痛な叫び声に、フロアを一気に緊張が包み込む。
明日の役員会議は、結衣が半年前から準備を進めてきた大型プロジェクトの最終プレゼンだった。
差し替えに必要なデータは数百行に及び、通常であればチーム全員で徹夜しても間に合うかどうかという絶望的な量だ。
「そんな・・・! データの元定義から計算し直さないと、明日の朝には絶対に間に合いません・・・!」
顔から血の気が引き、パニックで指先を震わせる結衣。
自分の確認不足ではないとはいえ、担当者としての責任と焦燥感が重く押し寄せてくる。
その時だった。
「藤崎先輩、落ち着いてください」
スッと結衣の前に立ち、視線を遮るように寄り添ってくれたのは廉だった。
彼は着ていたジャケットを脱いで椅子の背もたれに掛けると、シャツの袖を腕まくりしながら、迷いのない手つきで結衣のデスクのパソコン画面を操作し始めた。
「・・・え? 廉くん・・・・・?」
「大丈夫です。実は昨日の時点で、仕様変更の可能性を考えて別パターンの計算マクロを組んでおきました。修正が必要なのはこのCブロックの数値だけです。俺がバックアップと修正データの流し込みをやりますから、先輩は全体の最終チェックをお願いできますか?」
「えっ・・・昨日から準備してくれてたの・・・・・!?」
「当たり前です。結衣先輩が今までどれだけこの案件に時間と情熱をかけてきたか、一番近くで見てましたから。・・・俺に任せてください。」

