過去の傷も全部、君の熱で上書きして。

結衣を自然に歩道の内側へエスコートする手慣れた所作。​


「・・・・・あ、ありがとう。」

「先輩、さっき資料室で俺が言ったこと、冗談だと思ってますか?」


​夜の静けさの中に響く、低く落ち着いた声。結衣はハッとして足を止めかけた。​


「・・・・・そりゃ、冗談でしょ? だって私たち、大学時代だってそんな関係じゃなかったし・・・。瀬戸くんは可愛い後輩で・・・・・。」

「''可愛い後輩''のフリをしてただけですよ。」​


廉も足を止め、街灯の光の下で結衣を振り返った。

昼間のオフィスで見せる爽やかな笑顔は影を潜め、暗闇の中で彼の瞳だけが真っ直ぐに結衣を捕らえている。​


「大学の時、先輩が泣いてたの知ってます。あの男に雑に扱われて、一人で抱え込んでたのも。」

「っ・・・!」

​過去の傷を直接触れられ、結衣の身体が強張る。

元カレから言われた酷い言葉や、
裏切られた時の痛みが
フラッシュバックしそうになったその瞬間────