過去の傷も全部、君の熱で上書きして。


定時を1時間ほど過ぎた頃。

新年度初日の業務を終え、オフィスを出た結衣は、ビルのエントランスで廉と鉢合わせた。


​「あ、藤崎先輩。お疲れ様です。駅まで一緒に帰りませんか?」​


周囲にはチラホラと帰宅途中の社員もいる。

結衣は
「うん、いいよ。」
と頷き、二人で夜の路上へと踏み出した。

夜風が火照った頬に心地よい。

ビル群の灯りが道路を照らす中、結衣はできるだけ足早に歩こうとしたが、長身の廉は余裕の歩幅で隣に並び立つ。​


「初日、どうだった? 覚えること多くて大変だったでしょ。」

「いえ、楽しかったです。先輩がずっと隣で教えてくれましたし。」​


そう言って、廉は不意に道路側(車道側)へと立ち位置を変えた。