雨の匂いが混じるキャンパスの裏庭で、俺は足を止めた。
木陰のベンチに座っていたのは、
三つ上の先輩────
藤崎結衣(ふじさき ゆい)さんだった。
サークルでも学部でも、彼女はいつも周囲に気を配り、誰からも頼られる''しっかり者の先輩''として通っている。
綺麗で、落ち着いていて、どこか遠い存在。
大学に入学したばかりの俺にとっても、高嶺の花だった。
けれど、その時の彼女は違っていた。
濡れた瞳を必死に手袋で拭い、小さく肩を震わせている。
スマートフォンの画面を寂しそうに見つめては、絞り出すような息を吐いていた。
