過去の傷も全部、君の熱で上書きして。


午後の社内は、過半数の社員が出張や外出で出払っており、しんと静まり返っていた。​

結衣は「過去のプロジェクト資料の保管場所」として、フロアの最奥にある資料室へと廉を案内していた。棚にぎっしりと並ぶプロジェクト資料。

奥へと進むにつれ、廊下の微かな足音すら届かなくなっていく。​


「・・・・・ここがプロジェクト資料の保管庫。過去の事例を調べるときは、この棚から探すの。検索用の端末はあっちにあって────。」​


努めて''教育係の先輩''らしく説明を続けようとする結衣。

しかし、すぐ後ろをついてくる廉の気配が近すぎて、気が気ではない。

先ほど食堂で耳元に吹きかけられた低く熱い声が、脳裏から離れてくれなかった。​


(落ち着いて、私。彼はただの新人。私が変に意識したらダメ・・・・。)​