莉子からは絶対に見えない位置で、結衣の太ももに廉の膝が軽く触れた。
ビクッと肩を跳ねさせた結衣が横を見ると、廉は莉子と笑顔で話し続けながら、テーブルの下で結衣のスカートの裾をそっと指先で引っ張っていた。
さらに、莉子が飲み物を買いに席を立った、わずか数秒の隙。
廉は結衣だけに聞こえる声で、すっと耳元に顔を近づけた。
爽やかな笑顔は消え、低く熱い声が結衣の鼓膜を揺らす。
「・・・・・莉子先輩に連絡先教えていいか結衣先輩に聞かれたら、『ダメ』って答えるつもりだったのに。」
「え・・・・・っ?」
「『ただの教育係』なんて言って、俺を遠ざけようとしないでください。・・・・・・俺が我慢できなくなります。」
結衣が息をのむ間もなく、廉は何事もなかったかのように離れ、戻ってきた莉子に
「ごちそうさまでした。」
と爽やかに微笑んで立ち去った。
残された結衣は、熱を持った耳たぶを押さえ、激しく打つ心臓を抑えるのに必死だった。
同期に向けられる''誰にでも優しい好青年の顔''と、自分だけに向けられる''低くて甘い、男の顔''。
その圧倒的なギャップに、結衣のペースは早くも崩され始めていた。

