生き残りたければ、戦え。
それが、私たちに与えられた運命だった。
街の人々が次々と死んでいく。
そんな希望のない世界で私達は生きて逝く。
————————プロローグ—————————
「——黒歴321年——」
人類は3つの敵と争っていた。
1つ、それは人間とは真逆の青い血を宿す存在。
見た目は人と変わらない。だがその内側には、人類への深い憎悪が渦巻いている。
彼らは血を自在に操り、人を、国を、時には街そのものを滅ぼした。
黒歴の世界で、人々はその悪魔を"アズレイン"と呼んだ。
残りの2つの敵は…
—————1話「はじめまして」——————
黒歴323年 ミューランド クルト市
そこに1人の少女が誕生していた。
特別でもなんでもないただの平民だ。
「マーラ、お手伝いをして欲しいの。」
「どおしたの?お母さん」
「お父さんといっしょにノアさんの家へ行って"あの石"をもらいに行って欲しいの。」
「あの石…?お母さんは行かないの?」
「お母さんは少し用事があってね、ごめんね」
「…わかった。お父さんはどこ?」
「確か外にいるはずよ」
「わかった…行ってくるね」
「気をつけて…行ってらっしゃい…」
お母さんはそう言って強くマーラを抱きしめた
そして何故か暗い表情でマーラを見送った
「お父さん、お母さんが"あの石?"をおばさんから貰ってきて欲しいって」
「あの石…?…、わかった行こうか。」
私とお父さんはおばさんがいる山の奥へと歩いて向かった。
歩き始めて2時間が経つ頃9歳だったマーラは体力が限界を超えそこで倒れ込んでしまった。
「んん、、」
「マーラ…大丈夫か?…」
「…お父さん…?」
マーラは目が覚めるとお父さんに背負われていて気づけば空は茜色に染まっていた。
恐らく1時間半ほど眠っていたのだろう。
「もう暗くなる…急いでおばさんの家に…」
「ごめんなさい。迷惑かけちゃった。」
「いいんだ…まだ体力もそこまでないんだから」
そう言ってマーラはお父さんの背中を降り歩き始めた。
家を出て5時間が経つ頃空はもう既に暗くなっていた。辺りを見渡すと下には私達が住んでいる街もよく見えた。
「…わぁぁあ、きれえい。」
「そうだな…さぁもうすぐだ。おばさんの家に急くぞ。」
「うん…」
そこから少し歩き街の灯りが見えてきた。
おばさんの家に到着した。
「あら、いらっしゃい。ロアルドくん。」
そうおばさんはお父さんの名前を呼んだ。
「久しぶりミルカーさん。」
「…その子は、お子さん?」
「えぇ、そうです。」
人見知りなマーラはお父さんとおばさんの話している姿を後ろで隠れて見つめていた
「お名前、なんて言うの?」
「マーラ・アステリア…です。」
「そう…美しい名前ね…さぁ!上がってちょうだい!」
「お邪魔します。」
そう言って家に入るとそこにはマーラと同じ数ぐらいの少年が立っていた。
マーラはびっくりしてお父さんの後ろに隠れた。
「初めまして…!僕カイルって言うんだ!!」
「……」
「こら、マーラ挨拶しなさい。」
お父さんが厳しくそう言う
「初め…まして…マーラです。」
「へぇ、マーラって言うんだ良い名前だね!!」
「…ありがとう。」
「何歳なの?」
「9…歳」
「僕8歳!お姉ちゃんだ!」
カイルと話しているマーラは不思議と心が落ち着いた気がした。
「ロアルドくん、晩御飯用意してるからマーラちゃんと一緒に食べて。」
「ミルカーさん、本当に…ありがとうございます……。」
「全然いいのよ」
「ごちそうさまでした。」
マーラは晩御飯を食べ終えカイルと眠りについた。
1時間が経った頃マーラはあまりの暑さで目が覚めた。
外から話し声が聞こえ窓を覗くとおばさんとお父さんが話をしていた。
「もしかして…セレナさん…。」
「あぁ…きっと…そうなんだろう。」
(セレナ…?お母さん…)
お父さんとおばさんは何故かお母さんの話をしながら街の方を眺めていた。
(そう言えばあの石って…?)
「マーラ…?何してるの?」
「っ?!…カイル…暑くて起きちゃっただけよ。」
「そっか…水…飲む?」
「うん、飲む」
マーラは水を飲みぎりぎり見える窓からお父さんたちを眺めた。
「…?母さんたち何してるの?」
カイルが水を飲みながらそういった
「わからない…私のお母さんの話をしてた」
「…暑いし外出てみようよ」
カイルがそう言い私たちは外に出て親がいる方へ向かった。
「お父さん…?」
12時の夜の鐘と共にマーラがお父さんの名前を呼んだその瞬間
「危ない!!!!!!」
前にいたお父さんがものすごい速さで走ってマーラの背後へ移っていた。
わけもわからないマーラはお父さんの向かった後ろを向いた。
「見ちゃダメ!!!逃げるわよ!!!!」
おばさんの声と共にマーラはお父さんが何かに潰されているところを見てしまった。
マーラとカイルは身動きも取れずおばさんに連れられ家へ全速力で逃げた
家へ戻りマーラは泣きも何もできずただ立っていた。カイルはそんなマーラをただ悲しい顔で眺めていた。
マーラは窓からお父さんがいたところを眺めていたお父さんはいないきっと骨まであいつらにぐちゃぐちゃに潰されたんだろう。
マーラはすぐに眠りについた
ただ何も考えたくなかった。
長い夢を観た。そんな気がした。
朝になりマーラは街に帰ろうとした。
「マーラちゃん…一緒に住まない?」
おばさんは優しかった。
「お気遣いありがとうございます。でも私にはお父さんがいなくてもお母さんがいますので。」
「……マーラちゃん。」
おばさんはすごく深刻そうな顔をしていた
「………」
マーラは嫌な予感がして、走って外を飛び出た。
街中が騒がしかった。
マーラたちが住んでいる街を見るとそこはもう、街ではなかった。
全てが燃えて灰になっていた。お母さんもお父さんも、たった1晩でみんな死んだ。
「…あいつらのせい?…」
マーラはとうとう堪えていた涙が溢れ出した。
「お父さんも…お母さんも…みんなあいつらのせい?…」
おばさんは優しくマーラの体を包み込んだ
「ごめんね。ほんとにごめんね。」
おばさんはマーラと一緒に泣いていた。何故謝っているのかマーラにはわからなかった。
「ねぇ、一緒に住もう?」
おばさんにそう言われマーラは一緒に住むことを決めた。
黒歴323〇月〇日あれは呪いの夜だった
——————2話「戦う理由」—————————
それから三年の月日が流れた。
黒歴326年。
井戸での水汲みを終えたマーラとカイルが帰路についていた時、一人の男が声をかけてきた。
「ねぇ君たち重そうだね手伝ってあげようか。」
瞳の奥からここに住んでいる街の人の特徴とは離れていた
肌の色はまるで死んでいる人間の色だった。
「コイツら…前おじさんを殺したやつ…?」
カイルがそう言った
「あれ…知っているのか?…アズレインだって」
カイルはマーラの腕を掴み全速力で走りだした
「待ってカイル!!!!どうしたの!!!」
「奴らはマーラのお父さんを殺したやつの仲間かなんかだ!!見た目がすごく似てるんだ!!」
「え…?お父さんを…殺したやつ…?」
そこで私は力が抜けつまずき転んだ。
マーラは放心状態でアズレインと名乗った奴を眺めていた。
「あんたが…あんたの仲間が私の…お父さんを…」
マーラはあまりの怒りに足が勝手にアズレインの方へと進み始めていた
「マーラ!!!危ない!!!だめだ!!!」
カイルの声すらその時のマーラには聞こえてなかった。
アズレインがこちらを見ながら手と手を擦り合わせている
その時アズレインの手からへんな青い液体棒のようなものが飛び出してきた。
「マーラ!!!近づくな!!!!殺される!!!潰される!!!」
カイルは必死にマーラを止めていた。だけどマーラはアズレインと残り2メートルの距離まで近づいていた。
「あなた…アズレインかなんか知らないけど…絶対に殺す…痛い目を見せてやる…」
マーラは手元にあった木の枝を握りアズレインに立ち向かおうとした
「やめろー!!!」
バシュン_____。
カイルが叫んだその瞬間アズレインの頭に大きな槍が刺さった。
「君たち…大丈夫か。」
知らない声だった。アズレインの後ろを見ると男の兵士が立っていた
「貴方、だれ…兵士…?」
「ヴィルト・ロット石3白狼軍の兵士だ」
「白狼軍?…」
「あぁ、アズレインの絶滅を目指し戦っている」
マーラは一気に目を輝かせた。
「私も…私も戦う!!!!」
「マーラ!!何言ってるの!!」
カイルがマーラのほうへと近ずく
「私…アズレインと戦う。お父さんの仇を打つ」
「マーラには無理だよ…」
「そうだ君にはまだ早い…若すぎる。」
「私は本気だよ…やられてばっかじゃ気が済まない。仕返ししてやる。」
「…それだったら僕もマーラに着いていくから」
「カイル…あなたこそ無理よ」
マーラとカイルは真面目そうにそう言った
「君いくつなんだ」
「11歳、私は絶対に白狼軍に入隊する」
ヴィルトを見つめるマーラとカイルの瞳の奥は真っ黒な深い色をしていた。
バタン———。
物音がして後ろを振り返った。
ルミカーが心配して迎えに来ていた
「おばさん?…」
「何を言っているの…マーラ」
「おばさんまで反対するつもり?私は行くよなんと言われても」
「マーラ、ちゃんと見てた?貴方のお父さんが潰れるところを…アズレインがどんなに恐ろしいかその目で見たでしょ…?」
「うん…だからこそ私は白狼軍に入りたい」
マーラは真面目な顔をしてそういった
「カイル…なんか言ってちょうだい…」
「母さん安心して僕がマーラを守るよ」
「カイル!!!貴方まで行くつもり?…」
「マーラが行くならそうするつもり」
カイルも真面目そうな顔で伝えた
ミルカーは絶望した顔で子供の顔を眺めた。そして強く抱き締めた。
「そう…本気なのね…わかったわ。でも約束して絶対に死んだりなんかしないのよ…。」
「約束するよ。」
「死になんかしない。」
2人ともミルカーと約束を交わした
「そうか君たちはそんなに必死なんだな是非白狼軍に入隊してくれ。そのために沢山試練を乗り越えないとだがな」
「試練…?」
「もちろんだ…すまないが時間だ。ではまた逢う日まで」
そしてマーラ達の長い物語が始まる。
黒歴329年
マーラは14歳になっていた
「第5回白狼軍選抜試験を開始する!!私は白狼軍幹部のレオン・ガレスだ!!」
広場に響き渡る声に、受験者たちは一斉に背筋を伸ばした。
広場は五百人もの受験者で埋め尽くされている。
「お前たちはこれから国を守る剣となり、盾となる!」
「その身を国に捧げる覚悟のない者は、この場から立ち去れ!!」
その場に集まった者たちのほとんどが緊張で身を震わせる中、マーラとカイルだけは違った。
二人だけが、まるで試験を待ち望んでいたかのような目をしていた。
二人の瞳に恐れの色はなく、ただ真っ直ぐ前を見据えていた。
「ほう…。」
そんな2人にレオン・ガレス幹部は興味を抱いた
そこでガレス幹部はとある男に槍を向ける
「今ここで死ねと言えば死ねるか?」
男は怯えながら答える
「死…死にます…。」
「不合格だ今すぐに失せろ!!」
こうしてどんどん不合格者が増え
選抜試験が終わる頃には五百人もの受験者が三百人までに減っていた。
「たくさん…減ったね。」
「そうね。」
カイルがそうマーラに話しかけた瞬間
「黙れ」
見知らぬ男が言った
カイルは急な出来事に驚きを隠せず
「な、なんだお前!」
声を出してしまった。その時
「うるさいぞ!今誰が喋った?名乗り出ろ!」
ガレス幹部が怒鳴り始めた
「ちっ、だから黙れと言ったのに。」
マーラの隣にいる男は言った。
「申し訳ありません。私、アレス・ディオンと申します。今喋ったのは私です。」
アレスは庇うように名乗り出た
「そうか、何故喋った。喋っていいと誰が言った。」
目線はみんなアレスへと集まっていた
「理由はありま…」
「違うんです。私が話しかけてしまいました。」
マーラがアレスを庇い始めた
「そうか…もういい2人ともまとめて不合格だ。去れ」
カイルとアレスは驚いた顔をした。だがマーラだけはすごく平然としていた。
「失礼ですが幹部」
マーラは一歩前へ出た。
「彼は私たちを庇っただけです。」
広場がさらに静まり返る。
「喋ったのは私とカイルです。責任を負うべきなのは私たちでしょう。」
ガレス幹部は眉をひそめた。
「ほう。仲間を庇うか。」
「違います。事実を述べているだけです。」
その言葉に、周囲の受験者たちがざわついた。
「面白い。」
ガレス幹部は口元を歪めた
「ならば三人まとめて試してやろう」
そういい三人とも無事合格することができた。
「…変なやつだな。自分が助かる道もあっただろうに。」
アレスは1人小声でそう言った
兵舎へ戻る帰り道カイルはマーラに謝った
「今日、ごめん…僕が全部悪いのに。」
マーラは不思議そうな顔をした
「カイルも情けないことするのね」
すごく笑顔なマーラの隣にすごく落ち込んでいるカイルがいた。
「私はいいのよ。無事合格もできたし。だけどアレスくんには感謝しなさいよ。」
「うん…」
マーラの言葉にカイルの胸の奥は何故かざわついていた
————————3話「愛とは」————————
「白狼軍第5騎教官、ヴィルト・ロットだ!」
マーラとカイルは思い出す。ヴィルトがあの時助けてくれた兵士なのだと
「槍は1人に一本ずつ支給される!それがお前たちの武器だ」
みんな槍を一斉に手に取る
「槍をただの棒だと思うな。使い方次第で命を守る武器にも、人を殺す凶器にもなる。」
マーラは大きな槍を眺めた。
「アズレインの弱点は脳だ‼︎血を操るためには脳が必要だ!その脳を潰すんだ!」
マーラはヴィルトがアズレインを殺す時頭に槍を刺していたことを思い出す。
「前に距離7メートルほどのアズレインと同じぐらいの幅の人形を置いている!10人ずつ脳を狙え。」
前の人が次々人形の頭を刺し失敗している中カイルの順番が回ってきた。
バン——。
「すごいな君…位置が外れていない…」
近くに居たヴィルトはカイルをすごく褒め顔を見た
「ありがとう…ございます…」
「…!!君!前の!…女の子の方は…?」
そしてマーラの番が来た。マーラは褒められるカイルを見た事で上手くやる責任を感じ震え上がっていた。
ヴィルトとカイルはマーラを眺めていた
マーラは心を落ち着かせ脳に狙いを定め目の前の人形に槍を投げた。
だが槍は全然飛ばず人形より3m前の地面に突き刺さった。
「………」
マーラはあまりの恥ずかしさに頬を赤めた
「自信の割には苦手なこともあるんだな。」
そう言ってヴィルトは安心した顔をみせた。
「……?」
カイルにはその表情の理由がわからなかった
その時広場がざわついた
カイルは声がする方へ目を向ける
綺麗な顔つきの大人しそうな16歳ぐらいの男が強引にマーラの前髪を掴んで顔を見ていた
「なんですか。」
マーラは眉をひそめる
「その瞳…お前セーナか?」
男は小さな声で囁く
「違います。人違いです。」
カイルがマーラを助けに行こうとした瞬間アレスがその男の手を掴みマーラを助けにいった
「離せよ。」
「…なんだ、違うのか。」
そういい男は強引に手を外し去っていった
「なんだ、あいつ。」
アレスは男を睨んだ
「ありがとうアレス」
マーラはアレスに微笑んだ
「あぁ、」
アレスは静かに去っていった
その時カイルが走って駆け寄ってきた
「マーラ!!大丈夫??」
「大丈夫、アレスが助けてくれたから。」
マーラは笑顔で言った
「そっか、それはよかった」
遠ざかるアレスに向かってカイルが声をかけた
「まってくれアレス。」
アレスが立ち止まった
「この前も今日もありがとう。」
アレスは振り向き口を開く
「今日に関しては礼を言われる筋合いねえよ」
アレスはまた歩き出し列の1番後ろへと戻っていった。
カイルは10秒ほど黙って口を開いた
「アレスって優しいのか優しくないのかわかんないな」
「きっと根は優しい人なんだろうね。」
マーラは真剣な顔をしてそう言った
すると突然
「白狼軍第5騎で素晴らしい兵士となる卵の皆のもの!!よく聞け!!」
ガレス幹部が大口を開く
「明日、第5騎順位試験を行う!!そこで順位が決まり胸元に付く星石バッチの数が決まる!!最悪貰えず、過去最高で2つだ!」
「星石バッチ??なに?それ」
マーラは不思議そうに左胸元のポケットの位置に手を置く
「星石バッチは最大5つまであってそのバッチの数で強さが決まるんだ。」
そう言うヴィルト教官の左胸元には4つのバッチが付いていた
「5つじゃないんだ、」
カイルは口を滑らす
「5つバッチを揃えている兵士は過去含め全900兵士もの中3人のみだ。4つも20はいないだろう」
「3人の兵士…誰なの?」
マーラが聞いた
「1人はレオン・ヴァルク、レイスの父だ。」
「レイスって誰?」
「さっき君に手を出した男だ。だが、もうすでに父は死んでいる。」
「…っ、そうなんだ、」
カイルが苦しそうな顔をしている中マーラは無心に地面を眺めていた
「…っ!あと2人は!」
マーラは何かを思い出したかのように聞いた
「セシリア・クロエと、エルド・クロードだ。」
「流石に…ないか。」
マーラは呟きレイスがいる方へ顔を向けた
「ヴィルト教官、セーナという方をご存知ですか?」
「セーナ…女性だろうか、そんな名前は聞いたことないな、あだ名かもしれない。何かわかったら伝えに行く。今日の試練は終わりだ明日試験頑張れよ2人とも。」
「ありがとうございます。」
2人口を揃えてお礼を言った。マーラはあたかも何かに悩んでいるようだった
その日の夜
マーラは1人で兵舎の外を歩いていた
すると奥に人の影がいた
マーラは何かとその影を追いかけた先にはレイスがいた。
マーラは咄嗟に声をかけた
「…っ!あの!…レイス・ヴァルク…だよね。」
レイスが振り向いた
「お前は…セーナ?…じゃない…似た女か」
「セーナ…?そのセーナという人はどんな人なの?…」
レイスは手前にあるベンチに座る
「セーナは…」
マーラは距離を開けレイスと同じベンチに座る
「俺に…『愛』を教えてくれた人だ」
「『愛』…?」
マーラには『愛』がわからなかった
「セーナはどんな人だったの?」
「優しい人?」
「お淑やかな人?」
マーラは次々と質問する
「わからない。明日は順位試験だお前と関わる暇はない。」
レイスは呆れた顔で言った
「…そうね、ごめんなさい。お互い頑張りましょう。」
マーラがそういうとレイスはベンチから立ち兵舎の方へと歩き出す
その瞬間マーラは話しかける
「待って…!気が向いたら教えてね…。セーナのこと。」
レイスは一瞬立ち止まり、すぐに去っていった
きっと嫌なことを思い出したのだろう。
マーラが兵舎へ帰っているとき頭の中は『愛』でいっぱいだった。
『愛』とは何か——。
———————第4話「これから」——————
「これにより!第五騎順位試験を行う!ルールは森の中に置いてある約300ほどの人形の頭をその道具で突き刺す!それだけだ正確な位置を刺した数が多ければ多いほど得点は高い!」
思っていた何倍も簡単な試練で兵士は皆安心をしていた。
「余裕そーじゃん」
兵士たちはヘラヘラとしていた
だが現実はそう甘くはない、皆が思っていた以上に危険だ。
アズレインが好む薄暗い森に入り暗くて周りは見えない。その中で槍という危険な武器を持つ
下手をすれば仲間を刺すこともある。
「皆、くれぐれも調子には乗るな」
幹部がそういうと皆スタート地点に立つ。
「第五騎順位試験始め!!」
始めの掛け声と共に広がる兵士の声
開始早々怪我をする奴もいた
その中でレイスはとても冷静に人形を次々と倒していった。
「…さすがレオンの息子だ。」
監視官の隣で見知らぬ男が呟いた
だがレイスだけではなくカイル、アレスも負けないほど動いていた。
「第五騎は期待できそうだな。」
男はそういう。
「えぇそうね。」
男に続いて知らぬ女の声がした
その頃マーラは一体人形を刺し進んでいる中端で足を抑える女を見つけた
無視することができずマーラは女に声をかけた
「大丈夫…?肩を貸しますよ。」
「結構よ。私は歩ける。」
女はマーラの顔を見て睨むように言った。
「その怪我じゃ走ることも立ち歩くことも難しいと思いますよ」
マーラの言葉を無視し女は立とうとした。だがバランスを崩し女は倒れてしまった。
「肩貸すから。遠慮しないで」
マーラは女を支え一緒に最終地点の方へと進んで行った。
周りの兵士は既に何人かは最終地点へ到着している。
その中でマーラ達はまだ半分も進んでいない道のりを進んで行っている。
「貴方だけでも、私を置いて進めばよかったのに。そうしたら貴方の星は少なくとも1つはあったわ。」
女は申し訳なさそうに小声でそう言う
「いいえ。私はここでバッチがゲットできなかったとしても必ずどこかで5つゲットして見せる。」
マーラは自信満々に答えた
女はクスッと笑う。
「あなた、面白い人ね。私の名前はリリス・ディオンあなたの名前は?」
「私は、マーラ・アステリア」
「マーラ、ありがとう。」
「私は私として当たり前のことをしただけよ。」
2人が話していると最終地点が見えてきた。
到着するとたくさんの怪我人が居た。
この試験だけでも250人中147人が負傷15人が行方不明19人が死亡した。
「マーラ!!!」
カイルがマーラに向かって走ってきた
「カイル…無事だったのね。」
「こっちのセリフだよ!遅かったから…よかった。」
「…マーラ、私探さないといけない人がいるのごめん先行くわね、ありがとう。」
「えぇ、わかった気をつけてね。」
そういいリリスは人混みの方へと必死に歩いて行った
「あの子は?」
「さっき出会った子よ。」
「そっか…」
「皆のもの、よくやった。星石バッチの支給を行う!呼ばれたやつから前に出ろ!」
「オリヴィア、ローズ、カイル、イーサン、ルーカス、ウィリアム1星石だ。」
「ありがとうございます。」
「よくやったアレス、グレイス2星石だ。」
「ありがとうございます。」
「そしてレイス、歴史上初3星石だ。」
「ありがとうございます。」
前に出た9人は全員無傷だった。
「残りは皆、星石なしだ。欲しければ努力し得るのみだ。」
やはり、マーラは星石バッチを得ることができなかった。
「でも、ここからよ。」
マーラは、胸元の何もない場所を見つめた。
「必ず五つの星石を手に入れる。そして——アズレインを絶滅させる。」
父さんと母さんのために。
あの日、何もできなかった自分を変えるために。
マーラは槍を握り直した。
その隣で、カイルが笑った。
「僕も一緒に行くよ。」
「……うん。」
二人はまだ知らなかった。
この約束が、
いつか二人を救うことになるのか。
それとも——
二人を、引き裂くことになるのか。
黒歴329年。
ここから、すべてが始まった。
それが、私たちに与えられた運命だった。
街の人々が次々と死んでいく。
そんな希望のない世界で私達は生きて逝く。
————————プロローグ—————————
「——黒歴321年——」
人類は3つの敵と争っていた。
1つ、それは人間とは真逆の青い血を宿す存在。
見た目は人と変わらない。だがその内側には、人類への深い憎悪が渦巻いている。
彼らは血を自在に操り、人を、国を、時には街そのものを滅ぼした。
黒歴の世界で、人々はその悪魔を"アズレイン"と呼んだ。
残りの2つの敵は…
—————1話「はじめまして」——————
黒歴323年 ミューランド クルト市
そこに1人の少女が誕生していた。
特別でもなんでもないただの平民だ。
「マーラ、お手伝いをして欲しいの。」
「どおしたの?お母さん」
「お父さんといっしょにノアさんの家へ行って"あの石"をもらいに行って欲しいの。」
「あの石…?お母さんは行かないの?」
「お母さんは少し用事があってね、ごめんね」
「…わかった。お父さんはどこ?」
「確か外にいるはずよ」
「わかった…行ってくるね」
「気をつけて…行ってらっしゃい…」
お母さんはそう言って強くマーラを抱きしめた
そして何故か暗い表情でマーラを見送った
「お父さん、お母さんが"あの石?"をおばさんから貰ってきて欲しいって」
「あの石…?…、わかった行こうか。」
私とお父さんはおばさんがいる山の奥へと歩いて向かった。
歩き始めて2時間が経つ頃9歳だったマーラは体力が限界を超えそこで倒れ込んでしまった。
「んん、、」
「マーラ…大丈夫か?…」
「…お父さん…?」
マーラは目が覚めるとお父さんに背負われていて気づけば空は茜色に染まっていた。
恐らく1時間半ほど眠っていたのだろう。
「もう暗くなる…急いでおばさんの家に…」
「ごめんなさい。迷惑かけちゃった。」
「いいんだ…まだ体力もそこまでないんだから」
そう言ってマーラはお父さんの背中を降り歩き始めた。
家を出て5時間が経つ頃空はもう既に暗くなっていた。辺りを見渡すと下には私達が住んでいる街もよく見えた。
「…わぁぁあ、きれえい。」
「そうだな…さぁもうすぐだ。おばさんの家に急くぞ。」
「うん…」
そこから少し歩き街の灯りが見えてきた。
おばさんの家に到着した。
「あら、いらっしゃい。ロアルドくん。」
そうおばさんはお父さんの名前を呼んだ。
「久しぶりミルカーさん。」
「…その子は、お子さん?」
「えぇ、そうです。」
人見知りなマーラはお父さんとおばさんの話している姿を後ろで隠れて見つめていた
「お名前、なんて言うの?」
「マーラ・アステリア…です。」
「そう…美しい名前ね…さぁ!上がってちょうだい!」
「お邪魔します。」
そう言って家に入るとそこにはマーラと同じ数ぐらいの少年が立っていた。
マーラはびっくりしてお父さんの後ろに隠れた。
「初めまして…!僕カイルって言うんだ!!」
「……」
「こら、マーラ挨拶しなさい。」
お父さんが厳しくそう言う
「初め…まして…マーラです。」
「へぇ、マーラって言うんだ良い名前だね!!」
「…ありがとう。」
「何歳なの?」
「9…歳」
「僕8歳!お姉ちゃんだ!」
カイルと話しているマーラは不思議と心が落ち着いた気がした。
「ロアルドくん、晩御飯用意してるからマーラちゃんと一緒に食べて。」
「ミルカーさん、本当に…ありがとうございます……。」
「全然いいのよ」
「ごちそうさまでした。」
マーラは晩御飯を食べ終えカイルと眠りについた。
1時間が経った頃マーラはあまりの暑さで目が覚めた。
外から話し声が聞こえ窓を覗くとおばさんとお父さんが話をしていた。
「もしかして…セレナさん…。」
「あぁ…きっと…そうなんだろう。」
(セレナ…?お母さん…)
お父さんとおばさんは何故かお母さんの話をしながら街の方を眺めていた。
(そう言えばあの石って…?)
「マーラ…?何してるの?」
「っ?!…カイル…暑くて起きちゃっただけよ。」
「そっか…水…飲む?」
「うん、飲む」
マーラは水を飲みぎりぎり見える窓からお父さんたちを眺めた。
「…?母さんたち何してるの?」
カイルが水を飲みながらそういった
「わからない…私のお母さんの話をしてた」
「…暑いし外出てみようよ」
カイルがそう言い私たちは外に出て親がいる方へ向かった。
「お父さん…?」
12時の夜の鐘と共にマーラがお父さんの名前を呼んだその瞬間
「危ない!!!!!!」
前にいたお父さんがものすごい速さで走ってマーラの背後へ移っていた。
わけもわからないマーラはお父さんの向かった後ろを向いた。
「見ちゃダメ!!!逃げるわよ!!!!」
おばさんの声と共にマーラはお父さんが何かに潰されているところを見てしまった。
マーラとカイルは身動きも取れずおばさんに連れられ家へ全速力で逃げた
家へ戻りマーラは泣きも何もできずただ立っていた。カイルはそんなマーラをただ悲しい顔で眺めていた。
マーラは窓からお父さんがいたところを眺めていたお父さんはいないきっと骨まであいつらにぐちゃぐちゃに潰されたんだろう。
マーラはすぐに眠りについた
ただ何も考えたくなかった。
長い夢を観た。そんな気がした。
朝になりマーラは街に帰ろうとした。
「マーラちゃん…一緒に住まない?」
おばさんは優しかった。
「お気遣いありがとうございます。でも私にはお父さんがいなくてもお母さんがいますので。」
「……マーラちゃん。」
おばさんはすごく深刻そうな顔をしていた
「………」
マーラは嫌な予感がして、走って外を飛び出た。
街中が騒がしかった。
マーラたちが住んでいる街を見るとそこはもう、街ではなかった。
全てが燃えて灰になっていた。お母さんもお父さんも、たった1晩でみんな死んだ。
「…あいつらのせい?…」
マーラはとうとう堪えていた涙が溢れ出した。
「お父さんも…お母さんも…みんなあいつらのせい?…」
おばさんは優しくマーラの体を包み込んだ
「ごめんね。ほんとにごめんね。」
おばさんはマーラと一緒に泣いていた。何故謝っているのかマーラにはわからなかった。
「ねぇ、一緒に住もう?」
おばさんにそう言われマーラは一緒に住むことを決めた。
黒歴323〇月〇日あれは呪いの夜だった
——————2話「戦う理由」—————————
それから三年の月日が流れた。
黒歴326年。
井戸での水汲みを終えたマーラとカイルが帰路についていた時、一人の男が声をかけてきた。
「ねぇ君たち重そうだね手伝ってあげようか。」
瞳の奥からここに住んでいる街の人の特徴とは離れていた
肌の色はまるで死んでいる人間の色だった。
「コイツら…前おじさんを殺したやつ…?」
カイルがそう言った
「あれ…知っているのか?…アズレインだって」
カイルはマーラの腕を掴み全速力で走りだした
「待ってカイル!!!!どうしたの!!!」
「奴らはマーラのお父さんを殺したやつの仲間かなんかだ!!見た目がすごく似てるんだ!!」
「え…?お父さんを…殺したやつ…?」
そこで私は力が抜けつまずき転んだ。
マーラは放心状態でアズレインと名乗った奴を眺めていた。
「あんたが…あんたの仲間が私の…お父さんを…」
マーラはあまりの怒りに足が勝手にアズレインの方へと進み始めていた
「マーラ!!!危ない!!!だめだ!!!」
カイルの声すらその時のマーラには聞こえてなかった。
アズレインがこちらを見ながら手と手を擦り合わせている
その時アズレインの手からへんな青い液体棒のようなものが飛び出してきた。
「マーラ!!!近づくな!!!!殺される!!!潰される!!!」
カイルは必死にマーラを止めていた。だけどマーラはアズレインと残り2メートルの距離まで近づいていた。
「あなた…アズレインかなんか知らないけど…絶対に殺す…痛い目を見せてやる…」
マーラは手元にあった木の枝を握りアズレインに立ち向かおうとした
「やめろー!!!」
バシュン_____。
カイルが叫んだその瞬間アズレインの頭に大きな槍が刺さった。
「君たち…大丈夫か。」
知らない声だった。アズレインの後ろを見ると男の兵士が立っていた
「貴方、だれ…兵士…?」
「ヴィルト・ロット石3白狼軍の兵士だ」
「白狼軍?…」
「あぁ、アズレインの絶滅を目指し戦っている」
マーラは一気に目を輝かせた。
「私も…私も戦う!!!!」
「マーラ!!何言ってるの!!」
カイルがマーラのほうへと近ずく
「私…アズレインと戦う。お父さんの仇を打つ」
「マーラには無理だよ…」
「そうだ君にはまだ早い…若すぎる。」
「私は本気だよ…やられてばっかじゃ気が済まない。仕返ししてやる。」
「…それだったら僕もマーラに着いていくから」
「カイル…あなたこそ無理よ」
マーラとカイルは真面目そうにそう言った
「君いくつなんだ」
「11歳、私は絶対に白狼軍に入隊する」
ヴィルトを見つめるマーラとカイルの瞳の奥は真っ黒な深い色をしていた。
バタン———。
物音がして後ろを振り返った。
ルミカーが心配して迎えに来ていた
「おばさん?…」
「何を言っているの…マーラ」
「おばさんまで反対するつもり?私は行くよなんと言われても」
「マーラ、ちゃんと見てた?貴方のお父さんが潰れるところを…アズレインがどんなに恐ろしいかその目で見たでしょ…?」
「うん…だからこそ私は白狼軍に入りたい」
マーラは真面目な顔をしてそういった
「カイル…なんか言ってちょうだい…」
「母さん安心して僕がマーラを守るよ」
「カイル!!!貴方まで行くつもり?…」
「マーラが行くならそうするつもり」
カイルも真面目そうな顔で伝えた
ミルカーは絶望した顔で子供の顔を眺めた。そして強く抱き締めた。
「そう…本気なのね…わかったわ。でも約束して絶対に死んだりなんかしないのよ…。」
「約束するよ。」
「死になんかしない。」
2人ともミルカーと約束を交わした
「そうか君たちはそんなに必死なんだな是非白狼軍に入隊してくれ。そのために沢山試練を乗り越えないとだがな」
「試練…?」
「もちろんだ…すまないが時間だ。ではまた逢う日まで」
そしてマーラ達の長い物語が始まる。
黒歴329年
マーラは14歳になっていた
「第5回白狼軍選抜試験を開始する!!私は白狼軍幹部のレオン・ガレスだ!!」
広場に響き渡る声に、受験者たちは一斉に背筋を伸ばした。
広場は五百人もの受験者で埋め尽くされている。
「お前たちはこれから国を守る剣となり、盾となる!」
「その身を国に捧げる覚悟のない者は、この場から立ち去れ!!」
その場に集まった者たちのほとんどが緊張で身を震わせる中、マーラとカイルだけは違った。
二人だけが、まるで試験を待ち望んでいたかのような目をしていた。
二人の瞳に恐れの色はなく、ただ真っ直ぐ前を見据えていた。
「ほう…。」
そんな2人にレオン・ガレス幹部は興味を抱いた
そこでガレス幹部はとある男に槍を向ける
「今ここで死ねと言えば死ねるか?」
男は怯えながら答える
「死…死にます…。」
「不合格だ今すぐに失せろ!!」
こうしてどんどん不合格者が増え
選抜試験が終わる頃には五百人もの受験者が三百人までに減っていた。
「たくさん…減ったね。」
「そうね。」
カイルがそうマーラに話しかけた瞬間
「黙れ」
見知らぬ男が言った
カイルは急な出来事に驚きを隠せず
「な、なんだお前!」
声を出してしまった。その時
「うるさいぞ!今誰が喋った?名乗り出ろ!」
ガレス幹部が怒鳴り始めた
「ちっ、だから黙れと言ったのに。」
マーラの隣にいる男は言った。
「申し訳ありません。私、アレス・ディオンと申します。今喋ったのは私です。」
アレスは庇うように名乗り出た
「そうか、何故喋った。喋っていいと誰が言った。」
目線はみんなアレスへと集まっていた
「理由はありま…」
「違うんです。私が話しかけてしまいました。」
マーラがアレスを庇い始めた
「そうか…もういい2人ともまとめて不合格だ。去れ」
カイルとアレスは驚いた顔をした。だがマーラだけはすごく平然としていた。
「失礼ですが幹部」
マーラは一歩前へ出た。
「彼は私たちを庇っただけです。」
広場がさらに静まり返る。
「喋ったのは私とカイルです。責任を負うべきなのは私たちでしょう。」
ガレス幹部は眉をひそめた。
「ほう。仲間を庇うか。」
「違います。事実を述べているだけです。」
その言葉に、周囲の受験者たちがざわついた。
「面白い。」
ガレス幹部は口元を歪めた
「ならば三人まとめて試してやろう」
そういい三人とも無事合格することができた。
「…変なやつだな。自分が助かる道もあっただろうに。」
アレスは1人小声でそう言った
兵舎へ戻る帰り道カイルはマーラに謝った
「今日、ごめん…僕が全部悪いのに。」
マーラは不思議そうな顔をした
「カイルも情けないことするのね」
すごく笑顔なマーラの隣にすごく落ち込んでいるカイルがいた。
「私はいいのよ。無事合格もできたし。だけどアレスくんには感謝しなさいよ。」
「うん…」
マーラの言葉にカイルの胸の奥は何故かざわついていた
————————3話「愛とは」————————
「白狼軍第5騎教官、ヴィルト・ロットだ!」
マーラとカイルは思い出す。ヴィルトがあの時助けてくれた兵士なのだと
「槍は1人に一本ずつ支給される!それがお前たちの武器だ」
みんな槍を一斉に手に取る
「槍をただの棒だと思うな。使い方次第で命を守る武器にも、人を殺す凶器にもなる。」
マーラは大きな槍を眺めた。
「アズレインの弱点は脳だ‼︎血を操るためには脳が必要だ!その脳を潰すんだ!」
マーラはヴィルトがアズレインを殺す時頭に槍を刺していたことを思い出す。
「前に距離7メートルほどのアズレインと同じぐらいの幅の人形を置いている!10人ずつ脳を狙え。」
前の人が次々人形の頭を刺し失敗している中カイルの順番が回ってきた。
バン——。
「すごいな君…位置が外れていない…」
近くに居たヴィルトはカイルをすごく褒め顔を見た
「ありがとう…ございます…」
「…!!君!前の!…女の子の方は…?」
そしてマーラの番が来た。マーラは褒められるカイルを見た事で上手くやる責任を感じ震え上がっていた。
ヴィルトとカイルはマーラを眺めていた
マーラは心を落ち着かせ脳に狙いを定め目の前の人形に槍を投げた。
だが槍は全然飛ばず人形より3m前の地面に突き刺さった。
「………」
マーラはあまりの恥ずかしさに頬を赤めた
「自信の割には苦手なこともあるんだな。」
そう言ってヴィルトは安心した顔をみせた。
「……?」
カイルにはその表情の理由がわからなかった
その時広場がざわついた
カイルは声がする方へ目を向ける
綺麗な顔つきの大人しそうな16歳ぐらいの男が強引にマーラの前髪を掴んで顔を見ていた
「なんですか。」
マーラは眉をひそめる
「その瞳…お前セーナか?」
男は小さな声で囁く
「違います。人違いです。」
カイルがマーラを助けに行こうとした瞬間アレスがその男の手を掴みマーラを助けにいった
「離せよ。」
「…なんだ、違うのか。」
そういい男は強引に手を外し去っていった
「なんだ、あいつ。」
アレスは男を睨んだ
「ありがとうアレス」
マーラはアレスに微笑んだ
「あぁ、」
アレスは静かに去っていった
その時カイルが走って駆け寄ってきた
「マーラ!!大丈夫??」
「大丈夫、アレスが助けてくれたから。」
マーラは笑顔で言った
「そっか、それはよかった」
遠ざかるアレスに向かってカイルが声をかけた
「まってくれアレス。」
アレスが立ち止まった
「この前も今日もありがとう。」
アレスは振り向き口を開く
「今日に関しては礼を言われる筋合いねえよ」
アレスはまた歩き出し列の1番後ろへと戻っていった。
カイルは10秒ほど黙って口を開いた
「アレスって優しいのか優しくないのかわかんないな」
「きっと根は優しい人なんだろうね。」
マーラは真剣な顔をしてそう言った
すると突然
「白狼軍第5騎で素晴らしい兵士となる卵の皆のもの!!よく聞け!!」
ガレス幹部が大口を開く
「明日、第5騎順位試験を行う!!そこで順位が決まり胸元に付く星石バッチの数が決まる!!最悪貰えず、過去最高で2つだ!」
「星石バッチ??なに?それ」
マーラは不思議そうに左胸元のポケットの位置に手を置く
「星石バッチは最大5つまであってそのバッチの数で強さが決まるんだ。」
そう言うヴィルト教官の左胸元には4つのバッチが付いていた
「5つじゃないんだ、」
カイルは口を滑らす
「5つバッチを揃えている兵士は過去含め全900兵士もの中3人のみだ。4つも20はいないだろう」
「3人の兵士…誰なの?」
マーラが聞いた
「1人はレオン・ヴァルク、レイスの父だ。」
「レイスって誰?」
「さっき君に手を出した男だ。だが、もうすでに父は死んでいる。」
「…っ、そうなんだ、」
カイルが苦しそうな顔をしている中マーラは無心に地面を眺めていた
「…っ!あと2人は!」
マーラは何かを思い出したかのように聞いた
「セシリア・クロエと、エルド・クロードだ。」
「流石に…ないか。」
マーラは呟きレイスがいる方へ顔を向けた
「ヴィルト教官、セーナという方をご存知ですか?」
「セーナ…女性だろうか、そんな名前は聞いたことないな、あだ名かもしれない。何かわかったら伝えに行く。今日の試練は終わりだ明日試験頑張れよ2人とも。」
「ありがとうございます。」
2人口を揃えてお礼を言った。マーラはあたかも何かに悩んでいるようだった
その日の夜
マーラは1人で兵舎の外を歩いていた
すると奥に人の影がいた
マーラは何かとその影を追いかけた先にはレイスがいた。
マーラは咄嗟に声をかけた
「…っ!あの!…レイス・ヴァルク…だよね。」
レイスが振り向いた
「お前は…セーナ?…じゃない…似た女か」
「セーナ…?そのセーナという人はどんな人なの?…」
レイスは手前にあるベンチに座る
「セーナは…」
マーラは距離を開けレイスと同じベンチに座る
「俺に…『愛』を教えてくれた人だ」
「『愛』…?」
マーラには『愛』がわからなかった
「セーナはどんな人だったの?」
「優しい人?」
「お淑やかな人?」
マーラは次々と質問する
「わからない。明日は順位試験だお前と関わる暇はない。」
レイスは呆れた顔で言った
「…そうね、ごめんなさい。お互い頑張りましょう。」
マーラがそういうとレイスはベンチから立ち兵舎の方へと歩き出す
その瞬間マーラは話しかける
「待って…!気が向いたら教えてね…。セーナのこと。」
レイスは一瞬立ち止まり、すぐに去っていった
きっと嫌なことを思い出したのだろう。
マーラが兵舎へ帰っているとき頭の中は『愛』でいっぱいだった。
『愛』とは何か——。
———————第4話「これから」——————
「これにより!第五騎順位試験を行う!ルールは森の中に置いてある約300ほどの人形の頭をその道具で突き刺す!それだけだ正確な位置を刺した数が多ければ多いほど得点は高い!」
思っていた何倍も簡単な試練で兵士は皆安心をしていた。
「余裕そーじゃん」
兵士たちはヘラヘラとしていた
だが現実はそう甘くはない、皆が思っていた以上に危険だ。
アズレインが好む薄暗い森に入り暗くて周りは見えない。その中で槍という危険な武器を持つ
下手をすれば仲間を刺すこともある。
「皆、くれぐれも調子には乗るな」
幹部がそういうと皆スタート地点に立つ。
「第五騎順位試験始め!!」
始めの掛け声と共に広がる兵士の声
開始早々怪我をする奴もいた
その中でレイスはとても冷静に人形を次々と倒していった。
「…さすがレオンの息子だ。」
監視官の隣で見知らぬ男が呟いた
だがレイスだけではなくカイル、アレスも負けないほど動いていた。
「第五騎は期待できそうだな。」
男はそういう。
「えぇそうね。」
男に続いて知らぬ女の声がした
その頃マーラは一体人形を刺し進んでいる中端で足を抑える女を見つけた
無視することができずマーラは女に声をかけた
「大丈夫…?肩を貸しますよ。」
「結構よ。私は歩ける。」
女はマーラの顔を見て睨むように言った。
「その怪我じゃ走ることも立ち歩くことも難しいと思いますよ」
マーラの言葉を無視し女は立とうとした。だがバランスを崩し女は倒れてしまった。
「肩貸すから。遠慮しないで」
マーラは女を支え一緒に最終地点の方へと進んで行った。
周りの兵士は既に何人かは最終地点へ到着している。
その中でマーラ達はまだ半分も進んでいない道のりを進んで行っている。
「貴方だけでも、私を置いて進めばよかったのに。そうしたら貴方の星は少なくとも1つはあったわ。」
女は申し訳なさそうに小声でそう言う
「いいえ。私はここでバッチがゲットできなかったとしても必ずどこかで5つゲットして見せる。」
マーラは自信満々に答えた
女はクスッと笑う。
「あなた、面白い人ね。私の名前はリリス・ディオンあなたの名前は?」
「私は、マーラ・アステリア」
「マーラ、ありがとう。」
「私は私として当たり前のことをしただけよ。」
2人が話していると最終地点が見えてきた。
到着するとたくさんの怪我人が居た。
この試験だけでも250人中147人が負傷15人が行方不明19人が死亡した。
「マーラ!!!」
カイルがマーラに向かって走ってきた
「カイル…無事だったのね。」
「こっちのセリフだよ!遅かったから…よかった。」
「…マーラ、私探さないといけない人がいるのごめん先行くわね、ありがとう。」
「えぇ、わかった気をつけてね。」
そういいリリスは人混みの方へと必死に歩いて行った
「あの子は?」
「さっき出会った子よ。」
「そっか…」
「皆のもの、よくやった。星石バッチの支給を行う!呼ばれたやつから前に出ろ!」
「オリヴィア、ローズ、カイル、イーサン、ルーカス、ウィリアム1星石だ。」
「ありがとうございます。」
「よくやったアレス、グレイス2星石だ。」
「ありがとうございます。」
「そしてレイス、歴史上初3星石だ。」
「ありがとうございます。」
前に出た9人は全員無傷だった。
「残りは皆、星石なしだ。欲しければ努力し得るのみだ。」
やはり、マーラは星石バッチを得ることができなかった。
「でも、ここからよ。」
マーラは、胸元の何もない場所を見つめた。
「必ず五つの星石を手に入れる。そして——アズレインを絶滅させる。」
父さんと母さんのために。
あの日、何もできなかった自分を変えるために。
マーラは槍を握り直した。
その隣で、カイルが笑った。
「僕も一緒に行くよ。」
「……うん。」
二人はまだ知らなかった。
この約束が、
いつか二人を救うことになるのか。
それとも——
二人を、引き裂くことになるのか。
黒歴329年。
ここから、すべてが始まった。
