また、君のとなりで笑いたい

[第二節 春日和]

「おはよう」
 
 通学路。たまたま莉桜に会った。
 
 少しテンションが高いのは、おそらくそのせいだろう。
 
 母は暇なのか、相変わらず学校に行くとき、ついてくる。
 
 それも愛情だと受け入れるのが長男の定めだろう。
 
 弟も可哀想だな。
 
 両親が、兄の心配しかしないんだから。
 
 心配性なのは、親譲りなのか弟も同じ高校を受けるらしい。
 
 弟ほどの学力もあれば、合格できると思う。
 
 俺としては、好きな高校に進学してほしい。
 
 あと、みんな心配性を卒業してほしい。
 
「おはよう。芙雪くんは、宿題やった?」
 
「うん。バッチリ」
 
 学校が始まって早一ヶ月。
 
 学校生活にも慣れてきたし、莉桜ともそれなりにコミュニケーションをとっている。
 
 一つ残念な点といえば、体育祭に参加できないことくらいかな。
 
 競技性の高い種目はやっちゃダメらしい。
 
 そんなこんなで応援係なのだ。
 
 一人だけ席に座ってるのは寂しいけど、同じクラスの奴らは「お前の分まで勝つからな」とまるで死んだように扱っている。
 
 その気持ちは嬉しいので「勝手に殺すな」と返しておいた。
 
「芙雪くん。私も競技少ないし、一緒に応援する?」
 
「うん。莉桜さえ良ければ」
 
 割と……いやだいぶ食い気味に言った。
 
 莉桜と応援できるなんて、夢みたいだ。
 
 確か、応援団と短距離走に出場する。
 
 うちの学校は何故かクラス競技がない。
 
 選抜ものはたくさんあるけどな。
 
 一人五種目まで出られて、仲良くなった犬神は五種目出るらしい。
 
 アイツ運動だけはできるし、大丈夫だろうけど。
 
 負けたらめっちゃ責めてやろうと思う。
 
「私は大丈夫。芙雪くんと応援したいし」
 
 莉桜がそんな思わせぶりなことを言うから、耳まで赤くなる。
 
 慌てて顔を隠して、話を続ける。
 
「俺も。莉桜と応援できるの嬉しい」
 
 やけに口角が上がっているのは気のせいだと思う。
 
 うん。気のせいだな。
 
 気づけば玄関までついていた。
 
 莉桜と過ごしていると時間がいくらあっても足りない気がするのは気のせいだろうか。
 
「じゃあ、先行ってて。俺あとから行く」
 
「うん。わかった。遅れないでね」
 
「遅れないよ」
 
 そう言って、トイレに駆け込む。
 
 今朝、薬を飲み忘れたのを思い出したのだ。ポケットから薬と、リュックから水筒を出して個室で飲む。
 
 俺は、どうしても隠さなきゃいけない。
 
 誰にも気づかれたくはない。
 
 この関係性が崩れたら怖いから。
 
 崩したくないから隠す。
 
 特別扱いなんてしてほしくない。
 
 どんな俺でも俺だから。