「見えない」君と「見たくない」私

昨日の目の腫れが引かず憂鬱な気持ちで洗面台の前に立つ。
化粧は可愛くなるための手段なんてみんなは言うけれど私にとっての化粧は普通に近づくための手段。
アイプチして、日焼け止め塗って、下地塗って、ファンデ塗って、コンシーラー塗って言い出したらキリがない工程を毎日施して家を出る。
家を出る前玄関前の鏡で最終チェック。
目が腫れたせいでいつも以上に冴えない目に涙が出そうになるけどメイクを崩す訳には行かないからグッと堪えマスクをつけ家を出る。
汗でメイクが崩れないようにハンディファンを使いながら学校へ向かう。

「おはよう」

クラスメイトに定型文のような挨拶を交わし席に着く。
中学の頃の男子の品定めするような目が苦手で女子校に入学したけど今も人の目が怖いのは変わらない。
大して友達もいない。
いつも通りぼーっと授業を受け下校する。
今日は好きなバンドが出演するライブに行く。
重かった登校中の足取りが嘘のように軽い。
ライブハウスに入りステージから2列目の場所にたつ。
今日は運がよく始まる前から心躍る。
いつも通り全力でライブを楽しむ。
ライブハウスでは人の目を気にせずに全力で楽しむことができる。
ライブが終わり帰ろうと出口に向かうと前方にどこかで見たような後ろ姿が見えた。
思い出した、昨日の駅にいた人だ。

「あっ」

っと思い出した拍子に声を上げると男の人が振り向いた。

「あれ?昨日の人?」

相手も顔は見ていないが声で気づいたようだ。

「この後暇だったらどこか行かない?ライブの感想話したくてさ。」

男性というだけで少し警戒したけどこの人は何か違う気がすると思い誘いにのる。
心のどこかで誰かを信頼したいと思ったのかもしれない。

「私でいいなら」