薔薇色って何色?――ロト7で人生をやり直すはずが、敏腕弁護士の執着愛に捕まりました――

澤登法律事務所。

さっきまで眺めていた看板を、もう一度見上げる。

なぜここで足を止めたのか、自分でも分からない。

ほんの少し前まで私は銀行にいて、突然手に入った約十二億円という、いまだ現実味のないお金について説明を受けていた。

銀行を出た時には、これから自分の人生を変えるんだと、それなりに決意したはずだった。

けれど、何を変えるのか、何から始めるのかまでは、何ひとつ決まっていない。それなのに気がつけば、私は法律事務所の前に立っている。

「……何で?」

誰に聞くでもなく呟いてみる。

当然、答えは返ってこない。

弁護士を探していたわけじゃないし、何か訴えたい相手がいると具体的に考えていたわけでもない。そもそも法律事務所なんて、今までの人生で一度も入ったことがなかった。

普通なら、ちょっと怖い。

堅そうだし、高そうだし、何を話せばいいのかも分からない。

だから、そのまま通り過ぎればいい。

そう思って一歩進んだ。

でも――足が止まった。

振り返り、また看板を見る。

ロト7を買った、あの日と似ていた。

理由なんてないのに、なぜか気になる。頭では「やめておこう」と思っているのに、身体だけが別の答えを出している。

「……もう、いいか」

何が「もういい」のか、自分でも分からない。

私は小さく息を吐くと、扉へ手を伸ばした。