シークレット―世界は守れますが、恋の仕方はわかりません―

「これ全部ですか」

「そう」

「二時間で?」

「……頑張ろう」

 旧棟の一階。

 開け放たれた部屋の前で。

 直充は無言になった。

 段ボール。

 棚。

 古い機材。

 譜面台。

 何に使っていたのか分からない箱。

 それらが。

 廊下まで溢れかけている。

「聞いてた話と違いますけど」

「俺も今そう思ってる」

「誰から頼まれたんですか」

「教授」

「断ればよかったのに」

「断れるわけないだろ」

「なんでですか」

「俺、その教授の単位、今めちゃくちゃ崖っぷちなんだよ」

「…………」

 直充は先輩を見る。

「それ、手伝ったら単位もらえるんですか」

「分からん」

「じゃあ意味ないじゃないですか」

「でも印象はよくなるかもしれないだろ!」

「そんな取り方しようとしないでください」

「俺だってできるなら普通に取りたいよ!」

「勉強してください」

「正論が痛い!」

 先輩が胸を押さえる。

 直充はため息をついた。

「それで、俺を巻き込んだんですか」

「一人じゃ無理だと思った」

「正直ですね」

「そこは長所だから」

「今は短所です」

「冷たいなぁ」

 けれど。

 もう来てしまった。

 やるしかない。

 直充は袖を少しまくった。

「どこに運ぶんですか」

「使えるものは部室。いらないものは廃棄用に分ける。大学の資料っぽいのは奥の資料室」

「分かりました」

「頼りになる」

「終わらせたいだけです」

 先輩が笑う。

「そういうところが頼りになるんだよ」

「早く始めますよ」

「はいはい」

 直充は一番手前の箱を持ち上げた。