弁護士さん、恋愛の仕方がわかりません

いつも真っ直ぐ伸びた背は、ほんの少し丸まり。
ゆるく分けられた七三は乱れ、スウェットはサイズが少し合っていないのか大きめで少し頼りなく見えた。
足取りは重く、サンダルが情けなくぺた、ぺた、と音を鳴らす。

ほ、本当に『あの』高嶺さん…!?

レジ前までやって来ると、俯いてぼそっと一言。

「終業時間は何時ですか?」
「えっ?えぇと…」
「10分で構いません。お時間、いただけませんか」

黒縁眼鏡の奥から覗く瞳は大きく潤んでいて、私のお節介焼きな部分と母性がグラリ、と揺らぐ。

「わかりました…あと5分もしたら終わりますので。外のベンチで待っていてください」
「ありがとう…ございます」

どこか小さく見える背中をこちらに向け、自動ドアから出ると、そのままコンビニ前にあるベンチに腰掛けた。

コンビニで見かけるようになってから半年ほど。
高嶺さんのあんな姿を見るのは初めてだ。

いつだって、スーツをびっしり着こなし、堂々とした佇まいで来店していたのに。

そんなに『婚姻届事件』が、彼にとって大きなダメージになっている…のだろうか。

よくわからないけれど、あと数分。
私はなんとなく、厄介なお客さんが来ませんようにと祈りながらレジカウンターからベンチを見続けた。