ごめん、好き。

「……いいけど」

愛奈は戸惑いながら立ち上がると、その男のあとをついて教室を出ていった。

――誰だよ、あいつ。

気になる。

めちゃくちゃ気になる。

でも今の俺には、愛奈を追いかける理由なんてない。

だって俺たちは、ただの幼なじみ。

それ以上でも、それ以下でもない。

……自分で言った言葉なのに。

今になって、やけに胸に刺さる。

「康太、お前どうした?」

「……何が?」

「いや、めちゃくちゃあの二人のこと見てたから」

友達に言われて、慌てて視線を逸らす。

「別に。愛奈とはただの幼なじみだし」

まただ。

俺はまた、自分に言い聞かせるみたいに同じ言葉を口にした。

「ふーん」

「なんだよ」

「いや? 別に」

ニヤニヤする友達を無視して、帰る準備を始める。

だけど。

愛奈はなかなか戻ってこない。

5分。

10分。

……長くないか?

何話してんだよ。

気になって仕方ない。

「……俺、帰るわ」

鞄を肩にかけ、教室を出る。

別に愛奈を探しに行くわけじゃない。

ただ帰るだけ。

そう自分に言い聞かせながら廊下を歩いていると――

「ずっと前から、愛奈ちゃんのことが好きだった」

聞き覚えのない男の声に、足が止まった。

……え?

声がした方を見る。

少し先の階段。

そこにいたのは――

愛奈と、さっきの男だった。