ごめん、好き。

翌朝。

いつものようにマンションを出ると、俺は無意識に辺りを見回した。

「……あ」

愛奈はいない。

スマホを見る。

7時38分。

いつもならもう、

『康太、遅い!』

って怒りながら待っている時間だ。

……何やってんだ、俺。

昨日、距離を置こうって言われたばっかじゃん。

分かっていたはずなのに。

それでも俺は、どこかで愛奈がいつも通り待っているんじゃないかと思っていた。

「……行くか」

一人で歩く通学路は、妙に静かだった。

昨日までは隣から聞こえていた声も、

くだらないことで笑う声も、

今日は聞こえない。

たった一人いないだけで、こんなに違うんだな。

学校に着き、教室の扉を開ける。

「愛奈、おはよー!」

「おはよ!」

愛奈はもう来ていた。

梨沙たちと楽しそうに話している。

いつも通りの愛奈だ。

……俺以外には。

一瞬だけ目が合った。

「……」

声をかけようとした、そのとき。

愛奈は俺から視線を逸らした。

ズキッと胸が痛む。

自分で傷つけたくせに。

何傷ついてんだよ、俺。

「康太、おはよ」

後ろから友達に声をかけられて、俺も自分の席へ向かった。

その日の放課後。

「愛奈ちゃん」

教室の入り口から、知らない男の声がした。

何気なく顔を上げる。

そこには、見覚えのある男子が立っていた。

確か、隣のクラスの――。

「ちょっと話したいんだけど、いい?」

「……私?」

愛奈が驚いたように自分を指差す。

「ああ」

男は少し照れたように笑った。

「愛奈ちゃんに、ずっと言いたかったことがあって」

――なんだよ、それ。

胸の奥が、ざわついた。