ごめん、好き。

高校三年生の春。

俺は、幼なじみの愛奈のことが好きだ。

――いや。

好きになったのは、きっとずっと昔から。

愛奈とは同じマンションに住んでいて、学校がある日は、なんだかんだ毎朝一緒に登校している。

今日の待ち合わせは、朝7時40分。

スマホを見ると、時刻は7時42分。

マンションを出ると、そこにはすでに愛奈が待っていた。

「康太、遅い!」

俺の姿を見るなり、愛奈が頬を膨らませる。

どうやら、たった2分の遅刻でも許してくれないらしい。

「お前がいつも早すぎんだよ」

「昨日、電話で7時40分って言ったじゃん!」

「2分しか遅れてないじゃん」

そう。

俺たちは昨日の夜も電話をしていた。

特に大した用事があったわけじゃない。

くだらない話をして、笑って。

気づけば結構な時間が経っていた。

俺にとっては、そんな時間さえ特別だった。

「何? そんなに俺に会いたかったの?」

からかうように言いながら、愛奈の顔を覗き込む。

冗談のつもりだった。

だけど心のどこかでは――

『会いたかった』

そう言ってくれることを、少しだけ期待していた。

だって俺は、愛奈が好きだから。

ずっと、ずっと好きだから。

だけど、そんな俺の小さな期待なんて知るはずもなく。

「はぁ? 何言ってんの! そんなわけないじゃん!」

愛奈は笑いながら、俺の肩を軽く叩いた。

「……だよな」

俺も笑う。

こんなの、いつものことだ。

俺たちは幼なじみ。

それ以上でも、それ以下でもない。

――少なくとも、愛奈にとっては。