十五分後。
『追加ウェーブを確認』
「はい、一回目」
戦況表示の端では、味方NPCの残存数も更新されていた。
《ALLY NPC 10 / 12》
第一防衛区画へ視線を飛ばす。
さっきまで二機一組で道路を塞いでいた青い機影の片方が、瓦礫の脇で動かなくなっていた。
「もう二機落ちてるんだけど!」
『防衛線は維持されています』
「NPCもうちょっと頑張って!」
まあ、聞いていた。これはいい。
二十三分後。
『追加ウェーブを確認』
「二回目?」
《ALLY NPC 8 / 12》
「減るの早くない!?」
『敵数も増えています』
「知ってる!」
まあ、まだいい。
三十一分後。
『追加ウェーブを確認』
「三回目!?」
第一防衛区画の青い味方マーカーが、一気に二つ消えた。
《ALLY NPC 6 / 12》
数字だけじゃない。第三防衛区画の映像には、片膝をついた味方機の肩越しに、黒煙を上げて倒れた二機のAFが見えた。
「半分!?」
ゲームのNPCだ。
そう思っているのに、青い印が消えるたび、戦場が急に広くなるような嫌な感じがした。
ちょっと待て。
『第一防衛区画、大型反応』
ユイナの声が弾む。
『ボス!』
「なんで嬉しそうなの!?」
『でかい!』
「見れば分かる!」
レーダーに大きな赤いマーカー。
通常型の何倍もある。
「司令!」
『何?』
「ボス出るって聞いてない!」
『シナリオ進行による追加要素です』
「便利な言葉!」
『対応して』
「こっち輸送護衛中!」
『分かっています』
「じゃあボス消して!」
『イベント中に敵設定は変更できません』
「司令なのに役に立たない!」
『七瀬ソラ』
「ごめんなさい!」
怒られる前に謝った。
『ソラ!』
ユイナ。
『一人じゃちょっと面倒!』
「ちょっと?」
『たぶん!』
「その言い方絶対まずいやつ!」
レーダー。
第一。
大型。
第二。
敵十一。
輸送ユニット。
移動中。
第三。
カイの周囲にも赤が増えている。
「カイ!」
『何』
「第一のボス狙える!?」
『距離がある』
「無理?」
『撃つ』
「頼んだ!」
数秒後。
遠くで光。
巨大マーカーの耐久値が削れる。
『当たった』
「ナイス!」
『もう一発』
カイらしい。
淡々としている。
「ユイナ! カイが脚止めるからそこ狙って!」
『分かってる!』
「私は第二!」
操縦桿を切る。
視界が旋回。
AFが別の道路へ飛び込んだ。
『追加ウェーブを確認』
「四回目ぇ!?」
『第三防衛区画、支援NPC残存一』
「カイのとこほぼいないじゃん!」
『見えてる』
「今行く!」
『来なくていい。第二と輸送を見て』
「でも!」
『三人で戦うって決めた』
その一言で、私は操縦桿を握り直した。
「……分かった。任せる!」
レーダーに赤が増える。
「多すぎるでしょ!」
『ソラ』
「何!?」
『第三、二十二』
「カイ一人で!?」
『うん』
「なんでそんな冷静なの!」
『増えた』
「見れば分かる!」
第二防衛区画へ敵が侵入。
警告。
輸送ユニットへも敵が接近。
第一ではユイナが大型と交戦。
第三ではカイが二十機以上。
「これさ!」
思わず叫ぶ。
「ゲーム開発部ちゃんとテストプレイしてる!?」
返事なし。
「司令!」
『何?』
「これ本当にクリアできる設定!?」
ほんの少しだけ。
返答まで間があった。
『クリアするのが、あなたたちでしょう。任務に集中しなさい』
「それ答えになってない!」
右から砲撃。
避ける。
左から飛行型。
撃つ。
一機。
二機。
第三。
第一。
輸送。
第二。
目が足りない。
手が足りない。
身体が一つしかない。
「もう!」
左の操縦桿を倒す。
ペダル。
ブースト。
機体が飛ぶ。
輸送ユニットの上空へ。
敵を撃ち落とす。
『輸送ユニット一機損傷』
「今守ってる!」
『第二防衛区画、敵侵入』
「そっちも!?」
反転。
ブースト。
残量31%。
「ほら足りない!」
道路を飛ぶ。
敵三機。
四機。
六機。
「増えんな!」
射撃。
近接。
回避。
撃破。
撃破。
撃破。
『第二防衛区画、防衛値64%』
「まだ大丈夫!」
『第一、大型損傷七十』
カイ。
「ユイナ!」
『あと少し!』
「倒したら第一から動かないで!」
『分かってる!』
『第三、防衛値四十八』
カイ。
「カイ大丈夫!?」
『忙しい』
「それは見れば分かる!」
戦況表示。
全部悪くなっている。
なのに。
敵はまだ増える。
『追加ウェーブを確認』
「五回目!?」
思わず操縦桿から手を離しかけた。
「ちょっと待ってよ!」
当然、ゲームは待ってくれない。
砲弾。
警告。
「っ!」
右ペダルを踏み込む。
機体を横へ滑らせる。
着弾。
座席が短く揺れる。
損傷率13%。
「……もう」
腹が立つ。
「ゲーム開発部、絶対プレイヤー嫌いでしょ!」
◇
それでも。
私はやった。
敵を倒した。
護衛した。
防衛した。
ユイナを助けた。
カイの射線を作った。
自分でも、かなり上手くできていたと思う。
なのに。
『第二防衛区画、防衛値13%』
モニターの端では、さっきまで残っていた防壁が半分崩れ、敵の砲撃が施設のすぐ脇へ突き刺さっていた。
「待って!」
ブースト残量7%。
遠い。
「間に合え!」
ペダルを踏み込む。
5%。
4%。
3%。
視界の向こう。
第二防衛区画。
敵八機。
「そこどいて!」
射撃。
一機。
二機。
『第二防衛区画、防衛値5%』
「まだ!」
三機目。
四機目。
『第二防衛区画――』
「待って!」
『防衛失敗』
青いマーカーが消えた。
「…………」
一瞬。
指が止まった。
「え?」
地図から第二防衛区画の表示が消える。
『ソラ』
カイ。
『まだ終わってない』
「……分かってる!」
そうだ。
一個失敗しただけ。
まだ第一と第三がある。
輸送ユニットも残っている。
「次!」
操縦桿を握り直す。
『追加ウェーブを確認』
「はい、一回目」
戦況表示の端では、味方NPCの残存数も更新されていた。
《ALLY NPC 10 / 12》
第一防衛区画へ視線を飛ばす。
さっきまで二機一組で道路を塞いでいた青い機影の片方が、瓦礫の脇で動かなくなっていた。
「もう二機落ちてるんだけど!」
『防衛線は維持されています』
「NPCもうちょっと頑張って!」
まあ、聞いていた。これはいい。
二十三分後。
『追加ウェーブを確認』
「二回目?」
《ALLY NPC 8 / 12》
「減るの早くない!?」
『敵数も増えています』
「知ってる!」
まあ、まだいい。
三十一分後。
『追加ウェーブを確認』
「三回目!?」
第一防衛区画の青い味方マーカーが、一気に二つ消えた。
《ALLY NPC 6 / 12》
数字だけじゃない。第三防衛区画の映像には、片膝をついた味方機の肩越しに、黒煙を上げて倒れた二機のAFが見えた。
「半分!?」
ゲームのNPCだ。
そう思っているのに、青い印が消えるたび、戦場が急に広くなるような嫌な感じがした。
ちょっと待て。
『第一防衛区画、大型反応』
ユイナの声が弾む。
『ボス!』
「なんで嬉しそうなの!?」
『でかい!』
「見れば分かる!」
レーダーに大きな赤いマーカー。
通常型の何倍もある。
「司令!」
『何?』
「ボス出るって聞いてない!」
『シナリオ進行による追加要素です』
「便利な言葉!」
『対応して』
「こっち輸送護衛中!」
『分かっています』
「じゃあボス消して!」
『イベント中に敵設定は変更できません』
「司令なのに役に立たない!」
『七瀬ソラ』
「ごめんなさい!」
怒られる前に謝った。
『ソラ!』
ユイナ。
『一人じゃちょっと面倒!』
「ちょっと?」
『たぶん!』
「その言い方絶対まずいやつ!」
レーダー。
第一。
大型。
第二。
敵十一。
輸送ユニット。
移動中。
第三。
カイの周囲にも赤が増えている。
「カイ!」
『何』
「第一のボス狙える!?」
『距離がある』
「無理?」
『撃つ』
「頼んだ!」
数秒後。
遠くで光。
巨大マーカーの耐久値が削れる。
『当たった』
「ナイス!」
『もう一発』
カイらしい。
淡々としている。
「ユイナ! カイが脚止めるからそこ狙って!」
『分かってる!』
「私は第二!」
操縦桿を切る。
視界が旋回。
AFが別の道路へ飛び込んだ。
『追加ウェーブを確認』
「四回目ぇ!?」
『第三防衛区画、支援NPC残存一』
「カイのとこほぼいないじゃん!」
『見えてる』
「今行く!」
『来なくていい。第二と輸送を見て』
「でも!」
『三人で戦うって決めた』
その一言で、私は操縦桿を握り直した。
「……分かった。任せる!」
レーダーに赤が増える。
「多すぎるでしょ!」
『ソラ』
「何!?」
『第三、二十二』
「カイ一人で!?」
『うん』
「なんでそんな冷静なの!」
『増えた』
「見れば分かる!」
第二防衛区画へ敵が侵入。
警告。
輸送ユニットへも敵が接近。
第一ではユイナが大型と交戦。
第三ではカイが二十機以上。
「これさ!」
思わず叫ぶ。
「ゲーム開発部ちゃんとテストプレイしてる!?」
返事なし。
「司令!」
『何?』
「これ本当にクリアできる設定!?」
ほんの少しだけ。
返答まで間があった。
『クリアするのが、あなたたちでしょう。任務に集中しなさい』
「それ答えになってない!」
右から砲撃。
避ける。
左から飛行型。
撃つ。
一機。
二機。
第三。
第一。
輸送。
第二。
目が足りない。
手が足りない。
身体が一つしかない。
「もう!」
左の操縦桿を倒す。
ペダル。
ブースト。
機体が飛ぶ。
輸送ユニットの上空へ。
敵を撃ち落とす。
『輸送ユニット一機損傷』
「今守ってる!」
『第二防衛区画、敵侵入』
「そっちも!?」
反転。
ブースト。
残量31%。
「ほら足りない!」
道路を飛ぶ。
敵三機。
四機。
六機。
「増えんな!」
射撃。
近接。
回避。
撃破。
撃破。
撃破。
『第二防衛区画、防衛値64%』
「まだ大丈夫!」
『第一、大型損傷七十』
カイ。
「ユイナ!」
『あと少し!』
「倒したら第一から動かないで!」
『分かってる!』
『第三、防衛値四十八』
カイ。
「カイ大丈夫!?」
『忙しい』
「それは見れば分かる!」
戦況表示。
全部悪くなっている。
なのに。
敵はまだ増える。
『追加ウェーブを確認』
「五回目!?」
思わず操縦桿から手を離しかけた。
「ちょっと待ってよ!」
当然、ゲームは待ってくれない。
砲弾。
警告。
「っ!」
右ペダルを踏み込む。
機体を横へ滑らせる。
着弾。
座席が短く揺れる。
損傷率13%。
「……もう」
腹が立つ。
「ゲーム開発部、絶対プレイヤー嫌いでしょ!」
◇
それでも。
私はやった。
敵を倒した。
護衛した。
防衛した。
ユイナを助けた。
カイの射線を作った。
自分でも、かなり上手くできていたと思う。
なのに。
『第二防衛区画、防衛値13%』
モニターの端では、さっきまで残っていた防壁が半分崩れ、敵の砲撃が施設のすぐ脇へ突き刺さっていた。
「待って!」
ブースト残量7%。
遠い。
「間に合え!」
ペダルを踏み込む。
5%。
4%。
3%。
視界の向こう。
第二防衛区画。
敵八機。
「そこどいて!」
射撃。
一機。
二機。
『第二防衛区画、防衛値5%』
「まだ!」
三機目。
四機目。
『第二防衛区画――』
「待って!」
『防衛失敗』
青いマーカーが消えた。
「…………」
一瞬。
指が止まった。
「え?」
地図から第二防衛区画の表示が消える。
『ソラ』
カイ。
『まだ終わってない』
「……分かってる!」
そうだ。
一個失敗しただけ。
まだ第一と第三がある。
輸送ユニットも残っている。
「次!」
操縦桿を握り直す。


