よそ見なんてしてません!…たぶん。


 午後になり、再び外科病棟へ戻った。

 結局、食堂で聞いた会話が頭から離れない。

 『遊び慣れてる男って、余裕あるもんね――。』

 「…………」

 いやいや。

 考えない、考えない。

 今は仕事。

 須波先生のことは一旦頭の隅に追いやって、午後の業務に集中しよう。

 そう思いながらナースステーションに戻ると、

 「あ、白石さん?」

 聞き慣れない声に名前を呼ばれた。

 「はい?」

 振り返ると、そこには見覚えのない男性が立っていた。

 白衣の胸元には、研修医の名札。

 『和田 直樹』

 短めの黒髪に、人懐っこそうな笑顔。

 見るからに明るそうな雰囲気を纏っている。

 「今日、脳外からヘルプに来てる人ですよね?」

 「あ、はい。そうです」

 「やっぱり。俺、研修医の和田です。先週から外科回ってます。よろしくお願いします!」

 「あ、こちらこそよろしくお願いします」

 ペコッと頭を下げると、和田先生はニッと笑った。