よそ見なんてしてません!…たぶん。


 お腹すいたぁ。

 午前中の業務が終わり、私はひとり職員食堂へと来ていた。

 昼休憩のスタッフで賑わっている中、私は空いている席を見つけて着席する。

 目の前の油淋鶏定食に手を合わせて、いただきますと心の中で唱えた。

 一人になると、頭の中に浮かぶのは、もちろん須波先生のこと。

 付き合うことになってからのこの1週間、頭の中で何度も何度もリピートされるあの車内でのキス。

 唇の感触と、先生の眼差し。

 きゃあぁ……

 顔が火照るのは、口に含んだ味噌汁のせいではない。

 今でも鮮明に思い出せる。

 思い出すたびに、ドキドキして、うわぁーってなって顔を覆いたくなる。

 『これから覚悟しとけよ』

 …………無理。

 無理だよ。

 漫画とかドラマのワンシーンだよ、あれ。

 てことは、私がヒロインなの?

 いやいやいやいや、ヒロインってのはちょっと大袈裟だよね……うん。

 でも、付き合ったってことは、キスもその先も先生と………

 妄想の中で先生が、服を脱ぎ捨てる。

 引き締まった上半身が露わになって……

 ゴホッゴホッ

 う、油淋鶏のタレが喉にっ。

 慌てて水を流し込む。

 すいません。勝手に脱がせてすいません。

 顔を真っ赤にしてご飯を食べているのは、この広い食堂内を見渡してもきっと私だけだろう。