この想いは、誰にも言えない ~深碧の音 つぼみ蕾のように~

 この日は冷たい風が強く人通りも少ない。

 今マスカットの歌を聞いているのは、私と数人のファンの方だけ。

 あまりにも人の少なさに、ホワイトボードに書いた簡易的な看板が風で飛ばされたり、歌う状況には相応しくないため、やむなく移動を重ねた。

 次の移動からは同じファンの子がアーティストとの距離感のルールを教えてくれたから、もうヒョコヒョコくっついていくことはしない。

 これまで推し活とか全くしたことなかったから、アーティストとのいろんなルールがあるって、ここで初めて学んだ。

 そして、寒空の中、寒そうに震えながら歌う彼らの歌を聴いていると、寒いよりも音楽に触れる楽しさが勝った。

 冷たくなる指先に、ホカロン握りしめて聴く時間は心はジンワリと、暖かかった。

 (……これが推し活なんだ)

 って1人で静かにワクワクしながら、最後バスターミナルまで彼らの歌声にくっついていった。