推しラブ

 あのあと、思った通り、みんなに、「え〜、ほんとにもとからあったの〜?」って、ニヤニヤ顔で聞かれちゃった!でも、私と流星くんが説得して、やっと「ふ〜ん。」って、少し納得してなかったようだけど、信じてもらえた…んだ…!多分…! 
 それにしても、流星くんが買ってきてくれたフルーツ飴、めちゃくちゃ美味しかった……!みかんといちごの、甘さと酸味が合わさって、ちょうどいい組み合わせだったんだ…!今は、みんな、それぞれ好きなものを爆買い中。私も買ったんだけど、私、どっちかっていうと少食な方だし、特に欲しいものもなかったから、少ししか買わなかったんだ…!でも、みんなは結構お腹が減っていたみたいで、凄い量を買ってた。私の…、6倍ぐらいは買ってるんじゃないかな…?
 私がそう思ったとき、
「星…空、ちゃん?」
 と、私の後ろから、流星くんたちではない、男の子の声がした。
 だ、誰……?
 私が振り向くと、そこには、クラスメイトの男の子がいた。
 私、なんで話しかけられたの…!?
「あぁっ、ク、クラスメイトの…。」
 私がそう言うと、男の子は
「あ、やっぱり星空ちゃんだ。」
 と、ニコッとする。
 私、クラスメイトに、名字にちゃん付けで呼ばれてたんだ…。知らなかった…。って、そんなこと考えている場合じゃないっ…!
「え、えっと…、あの、何か、御用ですか…?」
 つい、知らない人に話すみたいになっちゃった…。敬語にもなっちゃったし…。クラスメイトだけど、話したことがないから、人見知りが発動してしまった…。あはは…。というか、私は地味キャラで(髪色は明るいけど…。)、クラスの空気みたいな存在なのに、なんで、名前を覚えてくれているんだろうっ…。
「あはっ、ごめん。用があって呼んだわけじゃないんだ。ただ、星空ちゃんがいたから、声かけてみただけ。なに?今日は1人で来たの?」
「あ…、き、今日は、美空ちゃんたちと流星くんたちと来たよっ…!」
 質問を返されて、私は少し戸惑ったけど、そう返す。
「へぇ、やっぱり林たちと仲いいんだ。」
 男の子は、一瞬、少し怒ったような顔をしたけど、すぐに笑顔になった。
「で、その林たちは?」
「えっ…、そ、そこの屋台に…。」
 私はそう言って指を指す。
「いないけど?」
 男の子は、親指でそっちを示す。
 えっ…、いないって、どういう…。
 そう思って、私はその屋台を見る。
 っ…!ほ、本当だっ…!
「ぇえっ、ど、どこに行ったか、知らない……?」
「俺が、見たわけないじゃん?」
 そう言われて、私はとっさに謝る。
「あっ…、そうだよね…。ごめんなさい…。」
 すると、男の子は、笑った。
「ははっ、やっぱり、星空ちゃんって面白いね。」
 え…?面白い…?
「ど、どこが…?」
 私がそう聞くと、
「どこが面白いかって?そういうとこ。」
 と、男の子はまた笑って言って、私にぐいっと顔を近づけてきた。
 ひぃ…!?ち、近い……!!
「置いて行かれちゃったみたいだし、俺と一緒に祭りまわる?」
 至近距離のまま、聞かれる。
「ええっ、で、でも…。」
「大丈夫だって!だって、置いていったあいつらが悪いんだよ?」 
 私の言葉を遮って、男の子は、そう言った。
「あ、あの…、なんで、私なんですか…?」
 気づけば、疑問を口にしていた。
「何が?」
「え、あ、あの、美空ちゃんとか、桜ちゃんとか、クラスメイトの女の子とか、可愛い子、いっぱいいるから…。私みたいな地味キャラで空気みたいな存在を、わざわざなんで誘うのかなって…。」
 普通は、もっとキラキラした、可愛い女の子を誘うと思う。でも、私は、暗めの地味キャラ。なんで、そんな人を誘うんだろう。って、思っちゃったんだ。
 すると、男の子は、面白そうに言った。
「あはっ、なんだ。無自覚系?」
 え…?無自覚系…?
「えっ、む、無自覚系って、何…?」
 私の、どこが無自覚なんだろう…?
「また、そういうところだよ。」
 そういうところ…って、わからないよっ…!
「それより、さっきの質問。なんで星空ちゃんを誘うのかって話。」
 ああっ、そのことですねっ…!?
 私が首を傾げると、男の子は顔を真っ赤にして、言った。
「そっか、それも、無自覚なんだ。…なんでかっていうと…、それは、俺が、星空ちゃんを…。」
「ストーップ!」
 男の子が理由を言いかけたとき、知っている声が聞こえた。
「咲花ちゃん、大丈夫?」
「りゅ、流星くん…!」
 私は、話したことのないクラスメイトとの空気に、息苦しさを感じていたから、ほっとする。
「ちっ、林。」
「今、何しようとしてたのかな?」 
 舌打ちをして流星くんを睨む男の子に、凄い形相で、そう聞いた流星くん。凄い形相っていうか、笑ってるけど目が笑っていないっていう表情。
 男の子、凄い雰囲気が変わった気がするっ…!
「咲花ちゃんは、俺たちの大切な親友。…だから…、奪わないでくれる?」
 男の子を真っ直ぐ見て、そう言った流星くん。その姿に、私はドキッとしてしまった。
「ちっ、次は絶対奪うからな!星空ちゃん、また今度!」
 そう言って、男の子はお祭りのどこかに行ってしまった。
 言葉の前半、男の子も、凄い形相をしてた…。
 2人とも奪う奪わないみたいなこと言ってたけど、何の話をしてたのか、わからなかった…。
「大丈夫だった?」
 流星くんが、心配そうに聞いてくれた。
「うん…!あの男の子、話したことなかったから、少し大変だったけど、流星くんが助けに来てくれたおかげで、ほっとしたよ…!ありがとう…!」
 私がお礼を言うと、ほっとしたような表情をした流星くん。
「良かったよ。はぁ、それにしても、危ないところだった…。」
 あっ、そういえば…。
「流星くんとあの男の子、何の話をしてたの…?」
「えっ?」
 私がそう聞くと、流星くんは驚いたような表情をした。
 あれっ…?なんか変なこと聞いちゃったかな…?
「気づいてなかったの?…たしかに、無自覚すぎるかもしれない…。」
 え、流星くんまで、無自覚って…。私、どこが無自覚なのか、いまだにわからない…。
「うーん。まあ、親友を奪われそうだったから、奪わないでって言ってたってとこかな。」
 そうなんだ…!でも、それって、流星くん、私を親友だと思ってくれてるってこと…?あれ、そう考えれば、私が奪われそうだったってこと…?
「まあ、とりあえず良かった。」
「流星くん、本当にありがとう…!」
 私はそうお礼を言った。
「咲花!」
 という声が聞こえた。
 声のした方を見ると、美空ちゃんたちが、走ってきているのが見えた。