推しラブ

 とうとう私たちの番が来てしまいました…!
 緊張で、ずっと私の心臓は、ドクドクと音を立てている。
 緊張する…!!!!
 そう考えながら、さっきの流星くんの言葉を思い出す。
『大丈夫大丈夫。咲花ちゃんなら、20個以上すくえるし、そこまで緊張しなくていいよ。』
 その言葉で、少しはリラックスできた気がする。流星くんには、いつも助けてもらってるな。頑張らないと…!
「じゃあ準備はいい?よーい、スタート!」
 流星くんがそう言って、ついに、私たちの番が始まった。
 よし、集中!たしか、ポイの外側のふちっぽいところでですくうと破れにくいんだったよね。
 私はそう考えながら、ゆっくりポイを水につける。
 まず、小さいのから、取っていこうかな…。よいしょっと…。取れた!
 私は、嬉しさで、取れたスーパーボールを見つめる。
 って、こうしていられない。もっと、どんどん取っていこう!美空ちゃんと桜ちゃんがどのぐらい取ってるのか気になる…!私より取ってそうだな…。とにかく、私は取れるだけ取ろう!速さよりも、正確さっていうか、破れないようにするのを重視して…。……わっ、めちゃくちゃ大きいの取ろうとしてた!危ない、危ない。ちょっと、集中しすぎたかも…?まぁ、集中したほうが多分たくさん取れるし、いっか。…す、少しずつ破れてきちゃったっ…!でも、まだこっち側が使える!!よいしょ、よいしょ…。…あっ、とうとう破れちゃった…。
「破れちゃった…。」
 そう言ってみんなの方を見ると、みんな、驚いた顔をしている。
 え…?あれ、どうしたんだろう…?
「いや、取りすぎ…。本当に20個以上取ったことないのって感じ…。マジで凄すぎ…!」
 流星くんがそう言う。はっと私の手元を見ると、見たことのないような量のスーパーボールを持っていた。
 え、あれ…?私、こんなに取った記憶ないんだけど…。
「咲花、集中しすぎて、私たちが終わったことも気づいてなかったわね。それに、何回か咲花を呼んだんだけど、聞こえてなかったみたい。」
「えっ……!?本当に聞こえなかった…。ごめんなさいっ…!」
 私は、そう謝る。
「ええねん、ええねん!そんだけ、集中してたっちゅーことやろ?」
 すると、桜ちゃんは、そう言ってくれた。
「あはは…、ごめんね…。」
「これで、咲花ちゃんが1位は確定やな。」
「で、俺が最下位なのも確定だな…。」
 川雨くんと流星くんがそう言う。
「ということは…、咲花ちゃんが流星くんに罰ゲームを言うってことだね!」
 光くんにそう言われて、私ははっとする。
「えっ、私っ……!?」
「そうそう、咲花ちゃん!流星くんに、何でも言っていいんだよ?」
 光くんは、少し悪い顔になる。
 こ、これは、悪巧みをしている表情ですね…!?
「えぇ…、私、罰ゲームを言うことなんて、できないよ…。」
「咲花さんは優しいですね。僕なら、たくさん出てきますよ。」
 勉くんも、悪い顔をする。
 勉くんの悪魔モード的なものが出ました!!勉くん、このような表情もするのですね!?
 そのとき、
 ぐぅぅぅ〜〜
 と、大きな音がした。
「あははは!俺の腹鳴ってしもた〜!」
 川雨くんが笑いながらそういう。
 今のは、川雨くんのお腹の音だったんですね…!?…あっ、それなら、流星くんに、みんな分の何か食べ物を買ってきてもらう…とか、どうかな…?
「え、えっと、じゃあ、罰ゲームは、みんなの食べ物を買ってくる…、で、どう…?」
 私がそう言うと、流星くんはあからさまにほっとした表情になる。
「軽い罰ゲームで良かった。この5人が1位になってたら、1ヶ月女声を出すとか、そういうのやってきそうだからな…。」
「……よくわかったな。」
 時基くんも悪い顔でそう言う。
「やっぱりな!咲花ちゃんが1位で良かったよ。」
 その様子を見て、私は苦笑いを浮かべる。
 あはは…。本当に1ヶ月女声を出すっていう罰ゲーム、考えてたんだ…。みんな、凄い罰ゲームを考えるなぁ…。
「ふふ。咲花ちゃん、もっとヤバい罰ゲーム言っていいのに〜!」
 光くんが、さっきと全く同じ悪い顔で言う。
 ヤ、ヤバい罰ゲームって、なんですか……!?
「はは…。とりあえず買ってくる!みんなはここで待ってて!」
 流星くんにそう言われて、みんなは『はーい』と返事をする。
「あっ…。」
 …なんか、申し訳なく思えてきた…。せめて、持つのだけ手伝おう…!
「ごめん!私、最後まで流星くんの様子、見てくる!」
『えっ。』
「すぐ戻ってくるから!」
 驚くみんなにそう残して、私は走って流星くんを追う。
 あっ、いた!流星くん、何を買おうか迷っているみたい。
「何がいいかな?みんな、何が好きかもわかんないし…。ご飯系がいいのか、デザート系がいいのか…。」
 そう、ブツブツつぶやいています!
「うーん。フルーツ飴とかか?手軽だし。でも、どの果物を選べばいいんだ…!」
 そう言って、流星くんは頭を抱える。
「…あっ、そういえば、最初の方で自己紹介をしたときに、教えてもらったんだったな。よし、フルーツ飴でいこう!」
 それから、思い出したように、そう言った。
 流星くん、フルーツ飴にしたみたいです!
 と、そのとき。
「ねぇねぇ、君、めちゃくちゃかっこいいね。一緒に写真撮ってくれない?」
 高校生らしき女の人が2人、流星くんに声をかけた。
 えっ、だ、誰…!?
「えっ、あの、誰ですか?」
 流星くんは、戸惑った様子で言う。
「うちら現役JKなんだけど〜、君、かっこいいから、写真一緒に撮りたいな〜って思って〜。」
 あっ、流星くん、イケメンだから…!
「すみません…、写真はちょっと…。」
 流星くんは、そう断る。
「え〜、ちょっとだけだし、いいじゃ〜ん。」
 だけど、女の人たちは、引く様子がない。
 これ、助けに行ったほうがいいかも…!?でも…、手足が震えるっ…!
 そう思って、私は緊張しながら流星くんのもとへ走る。
「す、すみません…!りゅ、じゃなかった…。男の子、困ってますよ…?」
 やっぱり初対面の人に話すのは、人見知りになっちゃう…。
「は?なに、お前?」
 そう言って、女の人たちは、私を睨む。
 ひっ…!
 思わず、悲鳴のような声が出そうになってしまった。
「あ、あの…、男の子、断ってるのに、強引にするのは、良くないと思います…!」
 私は、なんとか言葉を絞り出して言う。
「お前には関係ないだろ?この地味子!」
 女の人たちは、そう言って、私に手を伸ばしてきて、思わず目をつぶった。
 た、叩かれるっ……!
 顔に当たると思っていた手は、私が被っていた帽子に当たった。帽子が、近くに落ちる。
「え?」
 驚いたような声が聞こえて、恐る恐る目を開けると、私を見て、女の人たちは目を見開いていた。
 あれ、何かあったかな…?
 女の人たちは、なにかをこそこそ話し合ったあと、
「え、えっと、し、失礼しました〜!」
 そう言って、そそくさと行ってしまった。
 あれ…、な、何があったんだろう…?
「咲花ちゃん、助けてくれて、ありがとう!」
 私が首を傾げていると、流星くんからそう言われた。
「ううん。役に立ったなら、良かった。」
「そういえば…、咲花ちゃん、今来たの?なんか、ずっといたような感じがするんだけど…。」
 うっ、流星くん、感がいいっ…!
「え、えっと…、ず、ずっといた…。」
 私がそう言うと、
「え、どうして?」
 と、不思議そうに、流星くんに聞かれる。
「流石に、罪悪感があって…。持つのだけでも、手伝わせてほしいと思って…。」
 私の言葉に、流星くんは驚いたような表情をする。
「俺の罰ゲームなのに、わざわざ来てくれたの?持つために?」
 流星くんにまた聞かれて、私は頷く。
「そっか。ありがとう、咲花ちゃん。」
 流星くんは、そう言ってはにかむ。
「じゃあ、ちょっと買ってくるから、ここで…いや、人目のつかないところに、これ被って待ってて。」
 そう言って、流星くんはいつの間にか拾った私の帽子を渡してくれる。
「あっ、ありがとう…!わかった…!」
 私は、人目のつかなそうなところに行く。すると、流星くんの声が聞こえてきた。
「えっと、じゃあ、これとこれとこれとこれとこれとこれとこれとこれとあとは…、これとこれを一本の棒に混ぜることってできますか?」
 凄い…!選ぶの、めちゃくちゃ早い!さっき、自己紹介をしたときに、教えてもらったんだったって言ってたけど、ちゃんと覚えてるの、記憶力が良すぎだよ…!
 そういえば、なんで夜なのに帽子を被っていたかというと、お祭りに行く前、流星くんに、『みんな、帽子を被って行ってくれる?』って言われたんだけど、私、流星くんたちがかっこいいからだと思ったんだけど、なんで私たち(特に私)まで、帽子を被るのか、よくわからなかったんだけど…。私がよくわからないって思っていることを悟ったのか、光くんと美空ちゃんが、『そうそう!僕ら、可愛かったりかっこよかったりで、話しかけられるかもしれないし〜。』『』って言ってて、
 そう考えているうちに、流星くんが飴を買って歩いてきた。手には、袋を2つ持っている。
「咲花ちゃん、ちゃんと待っててくれてありがとう。」
 ど、どういうことだろう…?
 私がそう不思議に思うのと同時に、
「そうそう。咲花ちゃんが、1人で来てくれたのは、ちょっと好都合かも。」
 と、流星くんが言った。
「え?」
 その言葉に、私は首を傾げる。
「実はね、咲花ちゃんのだけ、ちょっと特別にしたんだ。」
 私のだけ…、特、別…?どういうこと……!?
「これ。」
 流星くんが見せてくれた飴は、みかん飴といちご飴が、合わさったものだった。
「えっ…、凄い…!可愛い…!」
 はしゃぐ私を見て、流星くんはふふっと笑う。
「喜んでもらえて良かった。ほら、俺たちが転校してきた初日だったかな?"みかんといちごが好き"って、言ってたでしょ?だけど、みかん飴といちご飴、それぞれしかなかったんだ。最初は、どっちかにしようと思ったんだけど、ぶどう飴とマスカット飴の組み合わせを見て、こういうふうにできないかと思ったんだ。だから、お店の人に頼んでみたら、やってもらえたんだよ。みかんといちごって、最高の組み合わせだね!」
「私のために…。ありがとう…!めちゃくちゃ嬉しい…!」
 私はそう言って笑った。
「あっ、でも、みんなには秘密だよ?俺、もとからあったって言うから。絶対みんな、冷やかしたりしてくるから。」
 流星くんは、少し頬を赤く染めて言う。
 あはは…。冷やかし…。
「わかった…!絶対に言わないっ…!」
「2人だけの秘密ね。」
 そう言われて、私はなんだか心がくすぐったいような気持ちになった。
「それじゃあ、みんな待ってると思うし、行こう。」
「うんっ…!」
 私は袋を1つ持って、流星くんとみんなのもとへ向かった。

 私たちがみんなのもとに行くと、
「遅かったから、心配したよ〜。」
「咲花さんも、急に行ってしまったので、びっくりしました。」
 と、言われた。
 みんなに、心配かけちゃったんだ…!
「心配かけちゃって、ごめんね…。ちょっと、色々あって…。」
 私がそう謝ると、時基くんが、
「まあ、無事なら良かった。」
 と言ってくれた。