こいがえり ――変わってしまった君と、変わらない私。

――けれど。




 ある日。




 その「ずっと」は。




 突然、終わった。




「……え?」




 雫は蓮の家の前に立っていた。




 蓮はいつもと違っていた。




 なんだか、元気がない。




「……れんくん?」




「ん」




「どうしたの?」




「……」




「私、何かした?」




「してへん」




「怒ってる?」




「怒ってへん」




「……じゃあ、なんで?」





 蓮は、しばらく黙っていた。




 それから。




「……俺、引っ越す」





「……え?」




「京都に戻る」




 雫は。





 すぐには理解できなかった。




「……京都?」




「うん」




「……いつ帰ってくるの?」




「……」




「明日?」




「ちゃう」




「来週?」




「……分からへん」




「……じゃあ」




 雫の声が震える。




「……いつ?」




「……」




「いつ、また遊べるの?」




 蓮は答えなかった。




 雫の顔が。




 少しずつ歪んでいく。




「……やだ」




「雫」




「やだ」




 雫が、蓮の服を掴んだ。




「……行かないで」




「……」




「ずっと一緒って言ったじゃん」




 蓮の表情が変わる。




「約束したじゃん……!」




「……雫」





「約束したのに……」




 ぽろぽろと涙が落ちる。




「……ごめん」




「ごめんじゃなくて」




「……」




「行かないでよ」




 蓮は雫を見つめた。




 そして。




 そっと、雫の頭を撫でる。




「……俺も、行きたくない」




 雫が顔を上げる。




「……ほんと?」




「そりゃそうやろ」




「……じゃあ」




「でも、行かなあかんねん」




 雫はまた泣いた。




 蓮は困ったような顔をする。




 昔から。



 雫が泣くと。




 蓮は一番困った顔をする。




「……なあ、雫」




「……」




「俺のこと、忘れんなよ」




 雫は首を横に振った。





「忘れない」




「ほんまに?」




「……うん」




「大人になっても?」




「忘れない」




「……約束?」




 雫は涙を拭く。




「約束」




 そして。




 雫は、ポケットから小さな貝殻を取り出した。




「これ」




「……あ」




「蓮くんがくれた」





「うん」




「これがあるから」




 雫は、貝殻を胸にぎゅっと抱きしめた。




「……絶対、忘れない」




 蓮は、少しだけ笑った。




「……そっか」




「……」




「じゃあ」




 蓮が小指を出す。




「最後に、約束しよ」




 雫も小指を出した。




 二人の小さな指が絡まる。




「絶対、また会おう」




「……うん」




「忘れん」




「……うん」




「雫も忘れんな」




「忘れない」




「……大人になっても」




「……うん」




「絶対やで」




「……絶対」




 けれど。




 その約束のあと。




 二人は離れた。




 手紙も。




 電話も。




 いつしか途切れてしまった。




 そして。




 長い年月が流れた。