こいがえり ――変わってしまった君と、変わらない私。

雫は、蓮のことが好きだった。




 友達として。




 家族みたいに。




 そして。




 小さな雫には、まだ上手く説明できないくらい。




 とにかく。




 蓮とずっと一緒にいたかった。




「ねえ、蓮くん」




 ある日の夕方。




 二人はいつもの公園にいた。




 遊具も。




 ベンチも。




 昔から変わらない。




 空だけが、少しずつオレンジ色になっていく。




「ん?」




「……大人になっても」




「ん」




「一緒にいようね」




 蓮は少しだけ笑った。




「またそれ?」




「だって大事なことだもん」




「……」




「約束して」




「……」




「蓮くん?」




 雫がじっと見つめる。




 蓮は、少し困ったように笑った。




「……約束」




「ほんと?」




「ほんま」




「絶対?」




「絶対」




「……」




 雫は嬉しそうに笑った。



 それから。




 少しだけ迷って。




「……あのね」




「ん?」




「ずっと一緒にいる約束……もっとちゃんとしたい」




「ちゃんとって?」




「……」




 雫は考えた。




 そして。




「……映画とかで」




「ん?」




「好きな人同士が……」




 蓮が目を丸くする。




「……キスするやつ?」




「……」





 雫は顔を真っ赤にした。




「……うん」




「……」




「変だった?」




「……いや」




「……」




 二人とも黙る。




 子どもだった二人にとって。




 それがどんな意味を持つのか。




 まだ、よく分かっていなかった。




 ただ。




 大切な人と。




 ずっと一緒にいたい。




 離れたくない。




 そんな気持ちだけは、本物だった。




 蓮は少しだけ考えてから。




「……雫」




「ん?」




「ほんまに、ずっと一緒にいたいん?」




「うん」




「俺と?」




「うん」




「……」




 雫は小さく笑った。




「だって、蓮くんが一番好きだもん」




 蓮が固まる。




「……友達として?」




「え?」




「いや……なんでもない」




「……?」




 雫は首を傾げた。




 蓮は少しだけ困った顔をする。




「……雫は、ほんまに変なこと言うなぁ」




「変じゃないもん」




「……」




 そして。




 ほんの短い時間。





 二人は顔を近付けて。




 子どもらしい、ぎこちない約束のように、そっとキスをした。




 それは。




 大人の真似をしたような。




 「ずっと一緒にいる」という。




 二人だけの小さな約束だった。




 雫は顔を真っ赤にして。




「……約束だからね」




 と言った。




 蓮も少し照れたように。




「……分かっとる」




 と答えた。




「絶対、離れないでね」




「……うん」




「ずっとだよ」




「……ずっと」



 その言葉を。




 二人は信じていた。




 本当に。



 ずっと一緒にいられるのだと。