待ち合わせ場所に慈の姿を見つけると、愛斗は手を振って駆け寄り、助手席のドアを開けて乗ってもらう。
エンジンをかけると、予定の変更を穏やかに伝えた。
「今日行く予定だった植物園、臨時工事中だったんだ。それで、苔ミュージアムに行きましょう」
「うん、わかった。私も事前に調べたら、HPに同じことが書いてあったよ」
「そうなんですね。知ってくれて助かりました」
「うん、大丈夫だよ」
車が走り出すと、愛斗は横目で慈の服装を見て、素直な気持ちを言葉にする。
「崎山さん、そのファッション、すごく似合ってますね」
「ありがとう」
車内は穏やかな会話で弾み、お互いの好きなことや日常の出来事を話しながら苔ミュージアムへと向かった。
——ミュージアムに到着。
玄関で入場料を支払おうと財布を出すと、慈が先に代金を手渡してくれた。
愛斗は慌てながらも、はっきりとお礼を言う。
「ありがとうございます。払ってもらっちゃって……次は俺が出しますね」
「気にしないで。ゆっくり楽しもう」
二人で館内に足を踏み入れると、大小様々な苔が緑のじゅうたんのように広がり、柔らかな光が差し込む静かな空間が広がっていた。
一つひとつの展示をゆっくりと見て回り、
「これは丸い形で可愛い」
「こっちはふわふわしてるね」
と感想を言い合うこと一時間。
十分に展示を楽しんだ後、二人は「苔づくり体験」のコーナーへと進む。
スタッフの前に座り、用意された苔と土、器を前に説明を聞く。
「まず器に土を適量入れて、好きな苔を選んで配置してください。押さえつけすぎず、ふんわりと植えるのがコツです」
説明が終わり作業を始めると、慈の手つきはとても慣れていて、器の中に苔をバランスよく配置していく。
一方の愛斗は初めての作業に手間取り、思うようにいかない。
「難しいな……どうすればいいんだろう」
「大丈夫、教えてあげる」
慈がそっと愛斗の側に寄り添い、手を添えて指導してくれる。肌が触れ合うほどの距離で優しく教えてもらい、愛斗は思わず頬を緩め、ニヤニヤとした表情になる。
「こうやって、そっと置いてから軽く押さえるんだよ。ふんわりとね」
「あ、なるほど。こうですか?」
「そうそう、いい感じだね」
それからは二人で並んで作業を進め、時折笑い合いながら、それぞれの苔の作品を仕上げていく。
——完成。
お互いの作品を見せ合い、愛斗は率直な感想を口にする。
「慈さん、すごく上手ですね。俺は全然うまくできなくて……」
「ありがとう。愛斗くんも十分上手にできてるよ。雰囲気がすごくいい」
「ありがとうございます」
二人は顔を見合わせて笑い合い、苔の種類や育て方の話など、話が尽きることなく弾んだ。
体験コーナーを出た後は、売店へと向かう。
「せっかくだから、家でも苔を育ててみようか」
「いいね。これがおすすめだよ、初心者でも育てやすいって書いてある」
慈に勧められた苔を購入し、ミュージアムを後にする。外はもうお昼時になっていた。
「お昼ですね。何が食べたいですか? 俺、何か買ってきましょうか」
「実はお昼、作ってきたんだ。よかったら一緒に食べない?」
「本当ですか! 嬉しいです、ありがとうございます」
近くの公園へと移動し、ベンチに座る。愛斗が持っていた飲み物を渡すと、慈は笑顔で受け取り、風呂敷に包まれた弁当を広げる。
中からはサンドイッチ、おにぎり、唐揚げ、卵焼き——彩り豊かで、とても手の込んだ料理が並んでいる。
「わあ、めっちゃ美味しそうですね!」
「ありがとう。たくさん食べてね」
「いただきます!」
一口食べるごとに、その美味しさに思わず笑顔になる。
「美味しいです! どれも本当に美味しい……!」
「よかった〜!」慈は心から嬉しそうに微笑む。
食べ進めながら、愛斗はふと思ったことを口にする。
「……慈さんが彼女だったら、どれだけ幸せだろうって思うんです。料理上手だし、すごく綺麗だし、一緒にいると本当に落ち着くんです」
慈は少し驚いたように目を見開き、それから柔らかく尋ねる。
「ありがとう。……愛斗くんは彼女、いないの?」
愛斗は真っ直ぐ慈の目を見て、はっきりと答える。
「いませんよ。俺……慈さんが好きですから」
慈の瞳がゆっくりと潤み、優しく笑顔が広がる。
「私も好きだよ」
「本当に……?」
「うん、本当だよ」
愛斗は胸が高鳴るのを感じ、思い切って言葉を続ける。
「俺と付き合ってください」
「はい、よろしくね」
二人は両想いになり、自然と手を重ね合って微笑む。弁当を片付け、ゴミをまとめてから車に乗り込む。助手席に座った慈の肩にそっと手を回し、柔らかく唇を重ねる。
「これから、よろしくね」
「うん、こちらこそ」
エンジンをかけ、待ち合わせ場所まで慈を送り届ける車の中は、これから始まる二人の時間への、温かな予感で満たされていた。
エンジンをかけると、予定の変更を穏やかに伝えた。
「今日行く予定だった植物園、臨時工事中だったんだ。それで、苔ミュージアムに行きましょう」
「うん、わかった。私も事前に調べたら、HPに同じことが書いてあったよ」
「そうなんですね。知ってくれて助かりました」
「うん、大丈夫だよ」
車が走り出すと、愛斗は横目で慈の服装を見て、素直な気持ちを言葉にする。
「崎山さん、そのファッション、すごく似合ってますね」
「ありがとう」
車内は穏やかな会話で弾み、お互いの好きなことや日常の出来事を話しながら苔ミュージアムへと向かった。
——ミュージアムに到着。
玄関で入場料を支払おうと財布を出すと、慈が先に代金を手渡してくれた。
愛斗は慌てながらも、はっきりとお礼を言う。
「ありがとうございます。払ってもらっちゃって……次は俺が出しますね」
「気にしないで。ゆっくり楽しもう」
二人で館内に足を踏み入れると、大小様々な苔が緑のじゅうたんのように広がり、柔らかな光が差し込む静かな空間が広がっていた。
一つひとつの展示をゆっくりと見て回り、
「これは丸い形で可愛い」
「こっちはふわふわしてるね」
と感想を言い合うこと一時間。
十分に展示を楽しんだ後、二人は「苔づくり体験」のコーナーへと進む。
スタッフの前に座り、用意された苔と土、器を前に説明を聞く。
「まず器に土を適量入れて、好きな苔を選んで配置してください。押さえつけすぎず、ふんわりと植えるのがコツです」
説明が終わり作業を始めると、慈の手つきはとても慣れていて、器の中に苔をバランスよく配置していく。
一方の愛斗は初めての作業に手間取り、思うようにいかない。
「難しいな……どうすればいいんだろう」
「大丈夫、教えてあげる」
慈がそっと愛斗の側に寄り添い、手を添えて指導してくれる。肌が触れ合うほどの距離で優しく教えてもらい、愛斗は思わず頬を緩め、ニヤニヤとした表情になる。
「こうやって、そっと置いてから軽く押さえるんだよ。ふんわりとね」
「あ、なるほど。こうですか?」
「そうそう、いい感じだね」
それからは二人で並んで作業を進め、時折笑い合いながら、それぞれの苔の作品を仕上げていく。
——完成。
お互いの作品を見せ合い、愛斗は率直な感想を口にする。
「慈さん、すごく上手ですね。俺は全然うまくできなくて……」
「ありがとう。愛斗くんも十分上手にできてるよ。雰囲気がすごくいい」
「ありがとうございます」
二人は顔を見合わせて笑い合い、苔の種類や育て方の話など、話が尽きることなく弾んだ。
体験コーナーを出た後は、売店へと向かう。
「せっかくだから、家でも苔を育ててみようか」
「いいね。これがおすすめだよ、初心者でも育てやすいって書いてある」
慈に勧められた苔を購入し、ミュージアムを後にする。外はもうお昼時になっていた。
「お昼ですね。何が食べたいですか? 俺、何か買ってきましょうか」
「実はお昼、作ってきたんだ。よかったら一緒に食べない?」
「本当ですか! 嬉しいです、ありがとうございます」
近くの公園へと移動し、ベンチに座る。愛斗が持っていた飲み物を渡すと、慈は笑顔で受け取り、風呂敷に包まれた弁当を広げる。
中からはサンドイッチ、おにぎり、唐揚げ、卵焼き——彩り豊かで、とても手の込んだ料理が並んでいる。
「わあ、めっちゃ美味しそうですね!」
「ありがとう。たくさん食べてね」
「いただきます!」
一口食べるごとに、その美味しさに思わず笑顔になる。
「美味しいです! どれも本当に美味しい……!」
「よかった〜!」慈は心から嬉しそうに微笑む。
食べ進めながら、愛斗はふと思ったことを口にする。
「……慈さんが彼女だったら、どれだけ幸せだろうって思うんです。料理上手だし、すごく綺麗だし、一緒にいると本当に落ち着くんです」
慈は少し驚いたように目を見開き、それから柔らかく尋ねる。
「ありがとう。……愛斗くんは彼女、いないの?」
愛斗は真っ直ぐ慈の目を見て、はっきりと答える。
「いませんよ。俺……慈さんが好きですから」
慈の瞳がゆっくりと潤み、優しく笑顔が広がる。
「私も好きだよ」
「本当に……?」
「うん、本当だよ」
愛斗は胸が高鳴るのを感じ、思い切って言葉を続ける。
「俺と付き合ってください」
「はい、よろしくね」
二人は両想いになり、自然と手を重ね合って微笑む。弁当を片付け、ゴミをまとめてから車に乗り込む。助手席に座った慈の肩にそっと手を回し、柔らかく唇を重ねる。
「これから、よろしくね」
「うん、こちらこそ」
エンジンをかけ、待ち合わせ場所まで慈を送り届ける車の中は、これから始まる二人の時間への、温かな予感で満たされていた。

