愛してるの期限が切れる前に

(なんて思われたかな)
 玲桜の隣に並ぶだけの基準を自分は満たしていない。
 彼の友達たちみたいに華やかでも、いわゆる一軍キャラでもないからだ。
(玲桜がモルフォ蝶色なら、私は――)
 ようやく歩調を緩められたのは、店が完全に見えなくなってからだった。

「あ……」

 持ってきたのがフラペチーノではなく、玲桜のアイスコーヒーだと気づいても、今さら交換しに行く勇気は出なかった。
 きっと玲桜も困ってしまっているだろう。
(玲桜も、感じ悪いって思ったかも)
 あんなふうに話を強引に切り上げてしまうのではなく、スマートなやり方ができればいいのに。
(でも、今の私には無理かな……)
 人に苦手意識を持っているようでは、社交的になんてなれやしない。
 強烈な自己嫌悪に陥っても、それも今さらだった。
 仕方なく、百花はアイスコーヒーを一口飲んだ。

「にが……」

――あのときのコーヒーは、どうしたんだけ?

 結末を思い出せないまま、夢は終わった。

❖❖

「ままぁ!」

 舌足らずの優しい声に目を覚ますと、視界には深く澄んだまん丸い蒼色の瞳がのぞき込んでいた。

「はーちゃん、おはよう」

 今年三歳になる娘の(はな)は、にこりと笑って「おはよ!」と元気よく応えた。

「まま、おーきて!」
「うん、起きよう。でもその前にっ」
「きゃはははっ!」

 百花の上に乗っていた花を抱きすくめて、布団の上でごろごろする。右に左に転がる花は声を立てて大笑いしていた。

「はい、終了」
「えぇっ、もっとやって!」
「大変。ママ、目回っちゃった。はーちゃん、ママのこと起き上がらせて」