愛してるの期限が切れる前に

 両親のいるフランスで産み育てていれば、花の目は周りに紛れて今ほど目立たなかっただろう。
 だが、ここで生み育てると決めたのは百花だ。

「本当ですよね。ものすごい宝物を持って生まれてきてくれたんですものね。ねー、花ちゃん」

 幸いにも、花は優しい人たちに囲まれている。
 変に花の目について詮索する人がいないのは、恵まれていた。
 先生の呼びかけに、花は「はーい」と元気よく片手を上げた。

「可愛いなぁ、それじゃ今日もお預かりします! お母さんもお仕事頑張ってください」
「ありがとうございます。よろしくお願いします。それじゃ、はーちゃん、いってくるね」

 手を振ると、「ばいばぁい」と先生に抱き上げられた花が手を振り返した。
 園を出るまで、登園してきた親御さんたちに会釈をしていく。
(レオって、玲桜だよね?)
 花の目の色を説明するとき、百花は先生に話した内容を伝えるようにしている。父親が亡くなったと言えば、変に詮索されることはないのが助かっていた。
(実は鳳玲桜が父親です。なんて言えないもの)
 この事実は、百花が墓場まで持っていく秘密だ。

 金輪際、玲桜とはかかわらない。

 花を生み育てると決めたとき、百花はそう誓った。
 百花自身、玲桜とは二度と会うこともないと思っている。
(私はセフレと一緒)
 玲桜は百花を抱いて、お金を置いて消えた。
 彼が苛立っていたことは伝わってきたが、それも自分のものだと思っていた玩具を他人に取られたことへの不満みたいなものだろう、と今は思っている。
(玲桜は私なんて好きじゃない)
 百花はお金で割り切れる関係はできない。