昨日までの片想い

 体育館の方から、卒業式開始の合図が聞こえる。静かな空間に響く、少し寂しく、それでも新しい門出を告げる祝福の音。
 私は養護教諭だから、保健室(この部屋)からの参加にはなってしまうけれど。
 卒業生の名が一人、また一人呼ばれるのを、目を閉じ静かに聞いていく。

 ──あぁ、あの子はよく保健室に来ていたな。
 ──健康診断の度に、体重を見て肩を落としていた子もいたっけ。
 ──クラスに馴染めず、よく保健室に顔を出していた子もいて。

 今日で、この学校を去る子がいる。
 先輩を送り出し、次の学年へ進む子がいる。
 そして、あと少しすれば、新しくこの学校へやって来る子たちもいる。

 外は見事な晴天。卒業式日和、という物だろうか。
 窓辺に置かれたテーブルに頬杖をついて、雲一つない空を見上げる。保健室の窓から見える校舎は、いつもと何も変わらない。
 けれど、きっと今日を境に、誰かにとっての『昨日』が終わって、そして新しい『明日』が始まっていくのだろう。