--どうしよう。どこいったかな。
放課後。中庭。
今、私はしゃがみ込んで、校舎手前の茂みを必死でかき分けている。
なぜ、こんなことになったのかというと--。
今日は天気がとても良く、空が抜けるように青かった。
それでつい、外の空気を感じながら、本を読みたいと思ってしまった。
本を読む場所として、私は誰もいない中庭の隅を選び、ベンチに座って本を開いた。
外は明るく、心地よい風が吹いていて、読書が捗っていた。
--けれど、その風が災いとなった。
ページをめくっていると、突然、強い風が一陣吹いた。
草木がザワッと揺れる音とともに、「あっ」と叫ぶ間もなく--。
本に軽く挟んでいた栞が、飛んでいってしまった。
栞が風に乗ってひらひらと舞い上がった。
けれど、その直後、砂が飛んできて目に入ってしまった。
「……っ」
思わず目を閉じた。
次に目を開けたときには--。
栞はどこにもなかった。
頭の中が真っ白になった。
あの栞は、祖母が作ってくれたものだった。
小学生の頃、祖母の家で本を読んでいたとき、
「栞は本当に、本が好きだね。
これからもたくさん読むんだよ」
と言って渡してくれた。
私は栞を見て、目を輝かせた。
透明なフィルムの中には、青い勿忘草の押し花。上には小さな穴が空いていて、青いリボンが通されていた。
かわいい……。
もらったときの喜びは今でも覚えている。
祖母が作ってくれた、唯一無二の栞。
多少色褪せても、今でも私のお気に入り。
それなのに--。
本当に迂闊だった。
泣きそうになる。
いや、今は泣いている場合じゃない。
探さなきゃ。
少し移動しようと立ち上がったとき--。
「西本さん」
名前を呼ばれ、ハッとして振り向く。
汐留くんが立っていた。
「汐留くん……」
私は目を丸くして、思わず呟いた。
どうしてここにいるのだろう。
