「汐留くん、私のおすすめの本を読んでくれたから。
だから、私も自信を持って、本を紹介してもいいんだって思えたんだよ‥‥‥」
汐留くんが私を見つめる。
それから穏やかに言った。
「よかった」
「え?」
「俺が、図書委員になったことで、図書室を騒がしくしてしまったから」
汐留くんが少し目を伏せた。
「西本さんの邪魔をしてるんじゃないかって思ってた」
「えっ、どうしてそう思うの?」
「西本さん、いつも図書室にいるとき楽しそうだから‥‥‥。
俺がいることで、楽しめなくなったんじゃないかって」
汐留くん‥‥‥そんなふうに考えてたんだ‥‥‥。
「そんなっ」
私は否定しようとした。
そのとき、ふいにある考えが頭をよぎった。
もし、このまま汐留くんが、自分のせいで私の邪魔をしていると思い込んでしまったら?
優しい汐留くんは、私に遠慮して、図書室に来なくなることもあるのかな。
そんなことは起こらない。
そう思いつつも、一度考えてしまったら止まらなくなった。
図書委員は、一人でも平気、気楽。
去年の私は、そう考えていた。
でも、汐留くんのいない図書室は--。
私は、自分の言葉が震えないように、ゆっくりと口を開く。
「私は、汐留くんを邪魔だなんて思ったことないよ。本当に一度も」
息を吐いて、続けた。
「し、汐留くんがいる今の図書室は、楽しいよ」
言った途端、顔が熱くなるのが分かった。
「ありがとう」
弾かれるように顔を上げると、汐留くんは私を優しい眼差しで見ていた。
「俺も楽しいよ。西本さんがいる図書室」
私は目を見開き、けれどすぐに俯いて小さく頷いた。
どうしてだろう。
嬉しくなったり、寂しくなったり。
男子でも、汐留くんは話しやすい人なのに。
汐留くんといると、一番心が落ち着かない。
◇
