「西本さん」
いつも通り図書室へ入ろうとしたとき、汐留くんに呼び止められた。
私は振り返った。
汐留くんが口を動かしかけたとき。
「汐留先輩!本借りに来ました!」
元気な女の子の声がした。
見ると、一年生の女子が三人で立っていた。
汐留くんは女子たちを一瞥したあと、何も言わずに図書室の中へと入っていったので、女子たちが慌てて
「待ってくださいよ」
と言いながら、中へ入った。
私は少し苦笑した。
バスケの練習試合が終わったあと、試合を見ていた上級生や下級生の女子たちも、汐留くん目当てで図書室に来るようになった。
一応、図書室の中では静かにしているけれど。
◇
今日は、利用者が多かった。
汐留くん目当てだけではなく、夏休みの指定課題で使う本を借りる人も何人かいた。
私と汐留くんは交代で、カウンターで貸出業務したり、書棚を整理したりした。
女子たちは汐留くんに貸出をしてもらいたかったみたいだけど、汐留くんはそれを無視していた。
私は本のバーコードをバーコードリーダーで、ピッピッと読み取りながら、本を送り出していく。
貸し出しが一段落して、私はなんとなく汐留くんへ視線を向けた。
図書室は落ち着いて、今は私たち以外、誰もいない。
汐留くんと話すのは、当番の日だけで、教室ではほとんど話さない。
だから、夏休み前に話せるのも、今日が最後かもしれないな……。
ふと、汐留くんと視線が合った。
私は慌てて目を逸らした。
