「うん。西本さんの声は分かるよ」
「な、なんて言ったか覚えてるの?」
汐留くんは真顔で答えてくれた。
「『頑張ってー』」
せ、正解です。
自分で聞いておいて、ちょっと恥ずかしい。
「人より少し耳がいいんだ。
でも‥‥‥西本さんの声はわかる」
汐留くんが、もう一度言った。
なんでそんなに自信あるのかな。
「どうして‥‥‥わかるの?」
ドキドキと、心臓の音が加速する。
汐留くんは視線を上げた。
「最近、よく聞く声だから‥‥‥」
そ、それって……、よく一緒にいるからってこと?
あ、でもそうだよね。
同じ委員会で、最近一緒に過ごすようになったもんね。
うん、そうだよね。
うん、うん。
私は納得したように、
「そ、そっか‥‥‥」
と頷いた。
あれ、じゃあ‥‥‥。
私の声が聞こえたから、笑ったってこと……?
ボールが入ったからじゃなくて……。
コートにいた汐留くんの笑顔が脳裏によみがえり、私は思わずうつむいてしまった。
「うれしかったよ」
汐留くんの声が耳に届く。
私はもう、いっぱいいっぱいだったので、
「は、はい‥‥‥」
としか言えなかった。
全身が熱いと感じるのは、きっと、夏の暑さのせい。
〜第3章スポーツの楽しみ方【完】〜
