「あ、いや、その‥‥‥」
と、言ったきり、言葉が続かない。
しばし沈黙が流れた。
それを打ち破るように、国枝くんが汐留くんに声をかける。
「ああ、朔。今日楽しかったな」
汐留くんは、国枝くんに視線を向けた。
「うん」
「ってか今日のお前、やたら俺のマーク厳しかったよな」
「‥‥‥そうか?」
「あと、いつもより……積極的だったような」
「‥‥‥そうか?」
「まあ、お前の本気を見られたのは光栄だけど。また試合しようぜ」
国枝くんが笑うと、汐留くんも頷いて
「うん、またやろう」
と言う。
「じゃあ俺、行くわ」
国枝くんが、私を見る。
「西本さん、今日はありがとう」
「あっ、こ、こちらこそ」
国枝くんは少し目を細めて、微笑んだ。
「多分、またそのうち会えると思う」
「えっ?」
そのうち会える?
どういうことか分からなかったけど、国枝くんは手を振って行ってしまう。
私は
「うん。また」
と言って、国枝くんの背中を見送った。
◇
〜Side 佐々木 佳奈〜
一緒にいたはずの汐留くんが、止める間も無く、本当に飛び出しまった。
栞の方へと走っていく汐留くんを見て、私たちは呆気にとられた。
谷口くんは笑いを堪えながら、
「じゃあ、俺戻るから」
と言った。
「いいもん見られた」とか思っているに違いない。
「あ、谷口くん」
私は去りかけた谷口くんを呼び止めた。
谷口くんが振り返る。
「試合、お疲れ様。大活躍だったじゃん」
私がそう言うと、谷口くんは笑って言った。
「ありがとう」
私と由梨は、栞の無事を見届けたので帰ることにした。
「汐留くん、行っちゃったね」
由梨がぽつりと言うと、私も
「ねー」
と、生返事をした。
