私は少し考え、言葉を選ぶように言った。
「国枝くん」
国枝くんは私を見る。
私はあの時のことを思い返し、できるだけ国枝くんに伝わるように、ゆっくり話した。
「実はあの後、本の乾かし方をいっぱい調べたんだ。
元通りにはならなかったけど……本の直し方、少しだけ詳しくなったよ。
えっと、つまり……勉強になったの」
だから―。
と、今度はちゃんと笑って言う。
「怒ってないよ。謝ってくれてありがとう」
国枝くんは私をじっと見つめた。
わずかな間のあと、口を開いた。
「ありがとう」
そう言って、国枝くんは固かった表情を少し緩ませた。
「変わらないね、西本さん」
「そ、そうかな」
「うん。優しいし。あと、笑った顔も……」
「笑った顔?」
国枝くんが頭の後ろを掻き、少しはにかみながら続けた。
「西本さんの笑った顔、結構かわ‥‥‥」
そのとき、後ろから大きな声が聞こえた。
「西本さん!」
私は振り返った。
「え……汐留くん?」
さっきまで体育館にいたはずの汐留くんが、こちらに駆け寄ってくるのが見えた。
そして私の目の前で立ち止まった。
少し息を切らしている。
「汐留くん、どうしたの?」
私は目を丸くして尋ねた。
汐留くんが大きな声出すの、初めて聞いた……。
汐留くんははっとして、それから視線を泳がせた。
