「そうだけど……。でも、俺、あのとき他の男子とふざけていたから。本もそのままにしちゃったし。それにーー」
国枝くんが、間を置いて続けた。
「西本さん、あの後、司書の先生に怒られたよね?
『本を大事にしなさい』って言われてたって。
たまたま見ていた男子が教えてくれたんだ。
俺のこと、言わなかったんだね。
それを聞いて、もう一度ちゃんと謝らなきゃいけないって思った。
けど、言い出せないまま、結局卒業式の時も言えなかった」
国枝くんは頭を下げた。
「あのときは、本当にごめん。ちゃんと謝ってなくてごめん」
ーーえっ。そ、そんな……。
私は慌てて言う。
「国枝くん。もう過ぎたことだし、大丈夫だよ」
国枝くんは、口元を歪ませ、首を振った。
「本が濡れたとき、西本さん悲しそうな顔をしていた。
でも、すぐに『大丈夫だよ』って笑って言ってくれた。
あのときの顔が、今でも忘れられないんだ。
司書の先生が『本を大事にして』って言ったのを聞いた時、俺、ふざけるなって思ったよ。
俺、知ってるよ。西本さんは本が好きで、誰よりも大切にしていることも。
まあ、全部、俺のせいなんだけど‥‥‥」
国枝くん……。
私は国枝くんの真摯な言葉に、胸を打たれた。
今こうして謝ってくれていることが、素直に嬉しかった。
