◇
私と国枝くんは今、体育館の裏に来ている。
私たちは、向かい合って立っていた。
「予定も聞かず、呼び出しちゃったね」
国枝くんが口を開いた。
「ううん。特に予定なかったから、大丈夫だよ」
「そっか、よかった」
国枝くんが頷いた。
さっきまでの態度とは打って変わって、国枝くんは元気がないように見えた。
やっぱり、負けて少し悔しかったのかな。
国枝くん、頑張ってたし。
「あの……お疲れさま」
少しためらいながら、声をかけた。
「ありがとう。負けちゃったけどね。というか、西本さんもバスケとか見るんだね」
「実は、こういう試合を見るのは初めて。クラスの人が試合に出てるから、応援しに来たの」
「へー、誰なの?」
「谷口くんと汐留くん」
「あー、涼太と朔か」
と、国枝くんは納得した顔でうなずく。
対照的に私は驚いた。
「二人のこと、知ってたの?」
名前で呼ぶなんて……。
「知ってるよ。時々一緒に練習試合するし、二人は中学から結構有名だったよ」
「そ、そうなんだ」
てっきり、今回が初めての対戦かと思った。
それに、あの二人、他校の人にも知られるほど有名だったんだ……。
ますます別世界の人に思えてきたな。
◇
〜Side 佐々木佳奈〜
私と由梨が体育館から出ようとしたのと同時に、
「えっ、汐留くん、どこ行くの?」
と、女子の驚いた声がした。
私は横目でそれを見る。
汐留くんは、女子たちの集団を抜け出していた。
汐留くんは何も言わなかったけど、代わりに谷口くんが、
「トイレだよ、トイレ。あっちの方が綺麗なんだ」
と、歩きながら答えた。
「えっ。二人で行くの……?」
そんなやりとりを見ながら、私は体育館を出た。
そして、二人と鉢合わせした。
汐留くんは、無言で遠くにいる栞たちを目で追っていた。
そして、そのままスタスタと歩き出す。
私は谷口くんと顔を見合わせた。
