「う、うん。実はちょっと難しくて……。
他の本を借りようかなと思って」
「そうか」
しばらくして、汐留くんは無言で私に歩み寄ってくる。
思わず息を呑む。
え……。
汐留くんの胸元が近くに迫る。
……と思ったら、私の頭上の棚へ手を伸ばし、一冊の本を抜き取った。
「この本、写真が多いからイメージ掴みやすい。……どうした?」
私は……本をぎゅっと抱えたまま固まってしまっていた。
び、びっくりした……。
一瞬、触れられるのかと思った……。
私は慌てて言う。
「な、何でもないよ。ありがとう。汐留くんもバスケの本読むんだね」
「図書委員になってから少し」
「そうなんだね」
私は本を受け取る。表紙には、名前の分からない選手が、シュートをする姿が描かれている。
「こっちもいい」
と、汐留くんがまた本を渡してくれる。
それからまた、書棚に目を通す。
心なしか、汐留くんは口元を少し緩ませている。
なんか、ちょっと楽しそう?
私も思わず口元が緩む。
手元にある本を見る。
「そういえば、汐留くんに本を紹介してもらうの、初めてだね」
汐留くんが目をしばたたせたあと、ふっと笑って言った。
「本当だ」
胸の奥がキュッとなった。
私は本に視線を落とし、小さくうなずいた。
