図書室の恋だより〜君とこの先もページをめくりたい〜

「西本さん」



「ひゃっ」



突然名前を呼ばれて、小さな悲鳴をあげた。



本をまた落としそうになった。



あ、危ない。よかった。



「ごめん」



また声がして振り向くと、汐留くんが近くに立っていた。



私は目を丸くして、汐留くんを見上げた。



「汐留くん、どうしてここに?」



小さな声でそう尋ねた。



汐留くんは首の後ろに手を回し、少し声を落として答えた。



「西本さんと……少し話がしたかった。

本持ってたから、図書室だと思った」




--気になって、来てくれたのかな……。



汐留くん、やっぱり優しいな。



私は迷ったけど、思い切って口を開く。



「汐留くん。私のこと……引いてないの?」



「ん?どうして?」



汐留くんが、首をひねる。



私はうつむいて、言った。



「私が……その……バスケの本を読んでいたから」



汐留くんは、わずかに目を見開くと、それから首を横に振った。




「俺、嬉しかった。

西本さんがバスケの本を読んでくれて。
楽しみだって言ってたのも。

本当に。

それを言いに来た」




それから少し顔を伏せて、続けた。




「でも西本さんは、嫌な思いをしたよな」



汐留くん……。




それは優しすぎるよ……。



張り詰めていた気持ちが、一気にやわらいでいく。



私は顔を見られたくなくて、咄嗟に本で顔半分を隠した。




「わ、私……汐留くんがそう言ってくれただけで、十分……です」




少し頭を下げる。




「来てくれて……ありがとう」




汐留くんが私の顔しばらく見つめると、頷いた。



少し沈黙したあと、私が持っている本に視線を向けて言った。




「その本、返すの?」