図書室の恋だより〜君とこの先もページをめくりたい〜




次の週から、図書委員の当番が始まった。

支度していると、ふいに机に影が落ちた。

見上げると同時に、声がした。

「西本さん、行こう」

汐留くんが、私の席の近くまで来ていた。

え、今日も一緒なの?

この前だけかと思っていた。

内心動揺しながらも、断る理由もないので、
「う、うん」
と頷いた。

--なんで声をかけてくれるんだろう。

汐留くんの背中を見て考える。

それとも、普通は一緒に行くものなの?

去年の男子は途中から来なくなったから、普通はどういうものなのか分からない……。

私たちは今日もお互い何も話さず、図書室へ向かった。




汐留くんのいる図書室は、とてもにぎやかだった。

「汐留、本当に図書委員してるねー」

「汐留くん、次の当番いつなのー?」

「当番終わったら遊ぼうよ〜」

女の子たちが、汐留くん目当てで図書室に来ていた。

汐留くんが座るカウンターの前で、楽しげにしゃべっている。

図書室は、静かな場所とは言えなくなってしまった。

そんな女子たちに対して、汐留くんは
「無理」
「さあね」
「今当番中」

と言ったり、無視したり。

驚くほどそっけない。

さすがに本を借りる人がいれば、仕事をせざるを得ないけど。

私なら、こんなにはっきり言えないので、ちょっとだけ羨ましいとも思ってしまった。


私は書棚の整理などして、極力目立たないようにした。




しばらく本を整理していると、ふいに人の気配がした。

気配がする方を見ると、汐留くんがいつもの真顔で、私の近くに立っていた。

図書室を見渡す。

図書室の中央にある木製のカウンター、白いテーブルが並ぶ閲覧スペース、木製の書棚……。

いつの間にか、誰もいなくなっていた。

汐留くんが口を開いた。

「西本さん、ごめん騒がしくて」

えっ?

謝ってくれてるの?

私は慌てて、手を振りながら言った。

「ううん!汐留くんのせいじゃないよ」

汐留くんは、

「いや‥‥‥」

と言った。

それから少しうつむいて、首の後ろに手を当てながら呟いた。

「こんな、つもりじゃなかったんだ……」

「えっ?」

どういう意味だろう?
首を傾げる。

しかし、汐留くんは

「返却棚にある本、戻してくる」

とだけ言って、行ってしまった。




次の当番も、私は汐留くんに声をかけられ、一緒に行った。

今日は二人でカウンターに並んで座っている。

パソコン画面を見ながら、私は蔵書検索のやり方を汐留くんに説明している。

「ここをクリックすると出てくるよ」

汐留くんは画面をじっと見て頷く。

汐留くんって真面目だなぁ。

この前も騒がしくなったこと謝ってくれたし。

説明をしていると、
「やっほー」
「汐留、本借りに来たよー」

と女の子たちが四人くらいでやってきた。

気のせいか、汐留くんの眉がぴくりと動いた。

女子たちは、私に何か言いたげな視線を送ってくる。

多分、席を外して欲しいんだろうな……。

私は「じゃあ、また」と言って、立とうとした。

その時--。

「西本さん」

汐留くんが私を呼び止めた。

私は驚いて汐留くんを見る。

汐留くんは真剣な表情で私を見ていた。

--どうしたんだろう。