図書室の恋だより〜君とこの先もページをめくりたい〜




汐留くんはもちろん、女子たちに手を振ったり投げキッスをしたりといったファンサービスはせず、淡々とコートに入っていく。



「谷口くーん!」



女子の、谷口くんを呼ぶ声に反応して、私はなんとなく谷口くんの方を見る。



ちょうど谷口くんがボールを奪い、そのままドリブルで駆け上がっていくところだった。



汐留くんはバスケ部の助っ人だけど、谷口くんは正式なバスケ部員。



女子が谷口くんの名前を叫ぶのは、聞き慣れている。



けれど、あのハイキングの日以来、私はなんとなく反応するようになってしまった。



集中しよう。



私は再び、自分の練習に意識を戻した。








練習が終わる頃には、学校の外はすっかり暗くなっていた。



学校から出ようとしたとき、



「佐々木さん」



急に声をかけられた。



びっくりして「わっ」と声が出てしまう。



ぱっと振り向くと、谷口くんが立っていた。



私の驚き声に驚いたのか、谷口くんも少し目を見開いていた。



「谷口くん……」



「ごめんね、驚かせて」



「ううん。どうしたの?こんな時間に」



バスケ部は全員帰ったはずなのに。



谷口くんは、自分のスポーツバックを少し持ち上げた。



「忘れ物しちゃって。佐々木さんは?」



「ちょっと練習に残ってたの」



そう答えると、谷口くんが「へー」と頷き、一緒に歩き出した。



今日は午前中に一雨降ったため、アスファルトはまだ湿っていた。ところどころにできた水たまりを避けながら歩く。



「頑張ってるんだね」



--頑張ってる、か……。



私は首を振った。



「そんなことないよ。大会近いだけ」



「佐々木さんたち、大会近いの?うちは他校との練習試合が控えてるよ」




私は苦笑した。



「知ってるよ。女子たちが騒いでたもん。絶対見に行くって」




「へー。佐々木さんは見に来るの?」