私――佐々木佳奈は、自分の衝動を必死で抑えていた。
放課後。私は自分の席で、両肘を机につき手に顎を乗せていた。
由梨は美術部があるため、美術室に行った。
私はこのあと、バドミントン部で体育館に行く予定。
栞は、今日は図書委員の集まりがある。
汐留くんに声をかけられ、二人で教室を出ていこうとする。
私は二人の姿をじっと眺めていた。
本当は--二人のあとを追いかけて、いろいろ聞き出したい。
衝動に駆られるままに。
だけど――。
ちらりと後ろの方を見る。
私の視線の先には、谷口くんがいる。
谷口くんは、今、女の子たちと話をしている。
私はあの日--。
谷口くんと約束をした。
だから、頑張って耐えないと―。
--あー、だめだ。もう行こう。
ひとつため息をついて立ち上がり、カバンを持って体育館へ向かった。
なぜ、私がこれほど悩むのか。
一体、何の衝動を抑えなければならないのか。
ことの発端は、数日前のハイキングに遡る。
私は汐留くんとゴミ拾いのペアになった。
イケメンとペアになるのは、本当にラッキー。
目の保養になるし、ゴミ拾いも楽しめそう。
女子たちからは嫌な視線を送られたけど、そんなの気にしない。
くじなんて運だし。
そんなんでやっかみを向けられても困る。
「汐留くんって兄弟いるの?」
ゴミ拾い中に、私は汐留くんに話しかけた。
--思ったより、ゴミ多いな。
こういうふうに環境を大切にしない人、たくさんいるよね。
「兄が一人いる」
汐留くんが真顔で淡々と答えた。
