確かに雨は、いつの間にか止んでいた。
「やっと止んだよ」
谷口くんが腕を伸ばしながら言った。
「行こうか」
汐留くんは、さっきの言葉なんてなかったかのように、歩き出した。
私も結局、黙って頷いた。
谷口くんと佳奈、その少し後ろを汐留くんと私が並んで歩く。
好きな本について、誰かと語り合うなんて。
しかも、本が苦手だと言った汐留くんと。
ちょっと緊張したけど、楽しかったな。
汐留くんのことも、少しだけど知れた気がする。
「ここ、滑りやすいから気をつけて」
「あ、ありがとう」
やっぱり汐留くん、優しいな。
私は、汐留くんの言葉を思い出す。
『誰にでも優しいわけではない』
あの言葉がどういう意味だったのかは、結局分からないままだったな。
雨上がりの草木の匂いが漂う。
湿った空気が、どこか温かかった。
私と汐留くんは、ぬかるんだ道をゆっくり歩いていった。
