「今の状況、似てない?」
「あ‥‥‥。汐留くん、読んでくれたんだね」
「うん」
--それは、うれしいな……。
『雨宿りの間に』は--
私が前に汐留くんにおすすめした本。
雨の日、偶然五人の高校生が公園の東屋で雨宿りをしていた。五人は知らない人同士。
そのうちの一人が話し出したのをきっかけに、五人は少しずつ話をするようになった。
お互い励まし合ったり、時には感情的になって言い合ったり。
シリアスな内容もあるけど、文章は軽やかで読みやすい。
クスッと笑えるような場面もある。
その五人が雨宿りしている情景が、私たちの状況と重なって見えた。
「あの五人、言いたい放題だった。知らないやつだと逆に言えるのか」
汐留くんが、いつもと変わらない表情で言った。
私も続く。
「最初は遠慮してたのにね」
「うん。あんなに言えたら、かえって清々しいよな」
私はふふっと笑った。
「ん?」
「『清々しい』って言葉、出てくるとは思わなくて」
「変か?」
「そんなことないよ」
「そうか」
汐留くんも少し笑った。
「でも、この本は……そこがいいと思った」
「そうなの?」
汐留くんが頷いた。
「前に、『本は苦手』って言ったけど」
「うん」
「俺は、登場人物の気持ちを考えるのが苦手なんだ」
ーーそうだったんだ。
「でも、あの五人ははっきり口にするから、何考えているか分かりやすかった」
「そうだね」
「気持ち、分かるなっていうセリフもあって、励まされた」
--よかった。
とりあえず、汐留くんのリクエストには応えられたみたい。
でも、汐留くんからこんなふうに本の感想を聞けるなんて、思いもしなかった。
雨の音と、汐留くんの落ち着いた声がとてもよく合っていて、耳の辺りがそわそわする。
