顔を上げてみると、いつの間にか汐留くんが隣に立っていた。
思ったよりも近くて、どきりとする。
「さっき--」
と小さな声で汐留くんが言う。
「涼太と‥‥‥何かあった?」
「え?」
佳奈と同じことを聞かれた。
汐留くんも気にしているの?
少し意外。
でも友達がクラスメイトと親しそうにしてたら気になるよね。
ちらりと汐留くんを見る。
彼の目は真剣そのものだった。
--そ、そんなに気になったんだ。
なんか逆に申し訳ないな。
「あ、あのね……」
私は佳奈にしたのと同じことを、たとたどしく説明する。
すると汐留くんは、片手の甲で口元を押さえ、
「‥‥‥涼太のやつ‥‥‥」
と小さく呟くと、しばらく黙り込んでしまった。
どうしたんだろう。
汐留くんのこういう姿を見るのは初めてなので、戸惑う。
「汐留くん?だ、大丈夫‥‥‥?」
「あ、うん。気にしないで‥‥‥」
具合が悪いわけじゃなさそうだけど、大丈夫かな。
私はなんと言えばいいか分からず、目の前の景色を黙って眺め始めた。
雨が、東屋に伸びる小径を叩きつけるように降っている。
その両脇の草木が、雨に打たれて首を垂れている。
湿った空気が、風と共に肌を撫でてきた。
不意に--。
私はある本の情景を思い浮かべた。
今の私たちって、まるで……。
「『雨宿りの間に』」
汐留くんの低く落ち着いた声がした。
え?と思って隣をみると、汐留くんも景色を見つめていた。
