汐留くんの穏やかな声が聞こえた。
「わかるよ」
私は顔を上げ、汐留くんを見る。
汐留くんは優しい目で私を見ていた。
「そうじゃなきゃ、俺みたいに本が苦手なやつが、本を読もうって思わなかった」
はっとする。
ずっと誰にも伝わっていないと思っていた--。
自分の、胸の奥にあった気持ち。
それを、目の前にいる、本が苦手だという男の子に届いていたんだ。
私は心から笑った。
「図書室だより、読んでくれてありがとう。
本を読んでくれてありがとう」
私がそう言うと、汐留くんはなぜか急に私から目を逸らす。
どうしたんだろう。
けれど汐留くんは、すぐにいつもの落ち着いた表情に戻っていた。
「いや‥‥‥。
俺も西本さんのおかげで、本苦手でも読める本があるんだって分かった。
だからこれ‥‥‥」
手に持っていたメモを少し持ち上げた。
「また、西本さんのおすすめの本を読みたかった。
俺のリクエストに応えてくれてありがとう」
「うん」
私は微笑んだ。
なんだか胸の奥がぽかぽか温かい。
「入ろうか」
汐留くんがそう言って、図書室に入っていく。
私もその後に続いた。
