「うん。そしたら、『汐留くんはいつものように自分の仕事に集中したらいい』って言ってくれて。
次の当番のときは、周りに注意してくれた」
「そんなことがあったんだね」
「うん」
そういえば、すっごく厳しく注意してくれたことがあったな。
「俺の名前、覚えてくれてた。意外と見てくれてるんだなって」
私も思い出したことがあった。
「私も本にバーコードを貼ったあとの次の当番の日に、『西本さんはいつも丁寧に仕事してるね』って言われたことがあった」
「そうか」
「驚いたけど、嬉しかったなあ」
「うん。俺も」
汐留くんが頷いた。
私が言った。
「先生、いつも司書室にいるけど、先生がいるって思うと、気が抜けないんだよね」
「そうだな。たまに出てくるときもあるし」
「うん。何か言われるのかなって、いつもどきっとする。特に……カウンターで本読んでるときとか」
「ああ」
と、汐留くんが頷いた。
「でもたいていこっちをちらっと見て、あとはさっさとどっか行くけどな」
「そうだね」
私は小さく笑った。
不思議。
草野先生を見たからかな。
この瞬間、この空間だけ、汐留くんと図書当番をしているみたい‥‥‥。
おかげで少し緊張が和らいだ気がするよ。
