少し冷静になって、私はあることに気がついた。
「っていうか、いつの間にか『佐々木さん』から『佳奈ちゃん』になってない?」
「あ、バレたか。だめ?」
「別にダメじゃないけど」
やっぱり軽い‥‥‥。
「谷口くん、絶対女慣れしてるでしょ。女子に対してスマートだし」
「そんなことないよ」
谷口くんのさらっとした態度に、急に私の恋愛スイッチが入ってしまった。
「今まで何人の女の子と付き合ったの?」
「うーんと‥‥‥」
谷口くんは指を折って数え始める。
やっぱり慣れてるんだ‥‥‥。
私の冷ややかな視線に気付いた谷口くんは、声に出して笑った。
「ははっ。冗談だよ。一人だよ」
「え、本当?」
それはそれでちょっと意外。
「本当、本当」
私はじっと谷口くんの顔を見つめた。
相変わらずニコニコ顔なので、表情だけでは嘘なのか本当なのかわからない。
でも、信じることにした。
「今付き合ってる人?」
私が聞くと、谷口くんはかぶりを振った。
「いや、もう別れたよ」
谷口くんが薄い笑みを浮かべる。
でも、その笑みの中に、どこか寂しさが垣間見えて、私は少し驚いてしまった。
だからか、いつもならこの手の話題には食いつく私も、
「そっか」
と軽く相槌を打つだけにした。
「夏祭り、何時に待ち合わせする?」
谷口くんも谷口くんで、あからさまに話題を変えてきた。
私も思考を強引に夏祭りに切り替えた。
「そうね、どうしようかなー。
最後の花火は絶対見たいよね。
屋台も回りたいし、早めに行った方が楽しめるよね」
話しているうちに自然と声が弾んでいた。
栞たちのことも気になるけど、お祭りはやっぱり大好き!
「ははっ、いつもの佳奈ちゃんだ」
谷口くんの笑い声がした。
◇
由梨も誘うと、「健ちゃんも一緒でいい?」と聞かれた。
健ちゃんは由梨の彼氏で、由梨は私たち三人の中で唯一彼氏がいる。
「逆に邪魔じゃないの?」
と聞くと、由梨はいつものように可愛らしく笑った。
「いいの、いいの。なんだか楽しそうだし」
そういうわけで、夏祭りのメンバーは、私、栞、谷口くん、汐留くん、由梨、由梨の彼氏になった。
なんだか変な組み合わせになってしまったな。
でも、すっごく楽しみ!
