誰もいない放課後の旧校舎。
今日もそこでは、今日も有名アイドルグループ“spirit《スピリット》”の曲が響いている。
「はぁ…はぁ…つっかれたぁ…!」
私はゴロンと横になった。
私は椋名雲華、私立中学校聖セーラス学園に通う中学2年生。
色素の抜けた真っ白な髪、瞳、肌が特徴なんだ。
私は「アルビノ」っていう全身の色素が抜けちゃう奇病持ちなの。
その見た目が神秘的で、アルビノの子たちは近年では捕まえられて売られることも多いみたい。
でも、逆にその見た目を利用して、私はモデルとか芸能活動に力を入れてるんだ。
なんでそんなことやってるのかって?
それは、お兄ちゃんの夢だから。
私のお兄ちゃんは、私が小学4年生の時に死んじゃった。
当時、お兄ちゃんは高校3年生だった。
先天性無痛無汗症っていう奇病を持ってて、過労で死んじゃった。
寒さと暑さを感じなかったり、あとは痛みを感じなかったりするから本当にギリギリまで気がつけなかったんだ。
お兄ちゃんは有名アイドルグループスピリットのメンバーで、世界的有名アイドルになる!」って意気込んでたんだ。
でも、それが行き過ぎちゃってこんなことに…。
それで私はその夢を託されたんだ。
だから頑張ってる。
私は自分の人生全部お兄ちゃんにかけるって決めてるから。
だけど——。
「こんなんじゃ、全然ダメだよ…」
まだまだお兄ちゃんのレベルには届かない。
どうすればいい?
こんなに頑張ってるのに…。
そんなふうに落ち込んでいると、ふとお兄ちゃんの言葉を思い出した。
『努力はな、必ず報われるんだ。報われないのは、あとちょっとの努力ができてないから。だったら、俺はもっと頑張るよ。だから、雲華もがんばれ』
そうだ。
お兄ちゃんはいつもそう言って励ましてくれてた。
こんなとこでウジウジしてる暇があったら、練習するんだ。
そうすれば、きっといつかお兄ちゃんに追いついて、さらに追い越せるんだ。
「よし、そうと決まったら、がんばるのみ!」
そうして、私はまたスピリットの曲を流した。
お兄ちゃんとは予想もしてなかった、突然永遠の別れを告げてしまった。
こんなふうに別れるつもりはなかった。
もっと話したかったし、もっと笑い合いたかったし、もっと他愛もない話をしていたかった。
だけど、もう叶わない。
もう無理なんだ。
でも、お兄ちゃんは私の記憶の中で生きてるから。
だから私がお兄ちゃんの代わりになる。
私の人生なんていらない、この人生は全部お兄ちゃんのためにある。
***
「ただいまー」
私はそう言ってから家のドアを閉める。
温かい我が家の香りが、疲れた私の体を癒してくれた。
「おかえり〜。そろそろご飯になるから」
「うん、ありがとう」
私は手を洗った後自分の部屋に荷物を置いて、すぐにリビングに行った。
リビングには勉強をしている妹の紫雨と、読書をしているお父さんの姿があった。
私は紫雨の隣に座って、スマホを取り出した。
モデルの仕事の確認をマネージャーとしようと思って。
それから確認のラインを送って、すぐにスマホを閉じた。
すると、紫雨が私をじっと見つめていたことに気がついた。
「…どうしたの?」
私は少し疑問に思ってそう聞いた。
交わされた視線の先には、私ではないなにかが移っている気がして、私は気がついた。
——あ、見てる。
紫雨も私と同じ奇病持ちで、世界で初めて現れた奇病だから治療法が全くわからないんだ。
どんなものなの?っていうと、突然見てる人の未来が色として見えるんだ。
例えば赤だったら命に関わるようなことが起きる、橙色だったらケガをしたりする、青だったら悲しいことが起きる…とか。
突然見えてしまって、もし赤色が見えたとしてなにもできないのが辛いんだって。
例えば通りすがりの人でも色が見えたりするから。
そういうのってきっと私の想像以上に辛いんだろうなって。
でも、この時紫雨は笑った。
「お姉ちゃん、このあといいことあるね」
私は首を傾げて聞いた。
「どんな色だったの?」
「ピンク。運命の出会いをする色」
「運命って…」
私はクスッと笑った。
また紫雨が傷つかなくてよかったと、少しホッとしながら。
「ご飯できたわよー。運んでちょうだい」
「はーい」
お母さんの言葉に反応して、紫雨はキッチンに行った。
運命の出会い…って、なにそれ。
私には出会いなんて必要ない。
お兄ちゃんを失ってわかった。
出会いがあれば別れもあって、誰にも出会わない方が幸せなんだって。
こんな“別れ”は一生経験したくないから。
***
あれから数日経ったけど、紫雨が言ったように“運命の出会い”は今の所してない。
いつも通りの日常、いつも通り旧校舎で練習。
そんなことを考えていると、いつのまにか一曲が終わっていた。
これ、全然集中できてない。
「はぁ…こんなんじゃダメだよ…」
私は大きなため息をつく。
私はぺたんと座り込んで、窓から見える空を眺める。
もう夏も終わりで、季節は秋。
快晴がキラキラ輝いてるみたい。
「ダンス、上手いな」
「え?ひゃ、ひゃぁぁぁ!!お、おばけ…!?」
「は?うるさ、てか失礼すぎ」
私はいきなり視界に入ってきた男の子の存在に驚いて、思わず叫んでしまった。
だって、この旧校舎は人いないもん…!
こんな突然現れるなんておばけ以外考えられないって…!!
そう思って怖くなるものの、そこに立つ男の子をしっかりと捉える。
キラキラ星みたいに輝いてる金髪に、氷のような水色の瞳、顔もちっちゃくて全部が整っていてまるでどこかのアイドルみたいだ。
そして私は彼に見惚れていたことに気がついて、ハッとする。
「え、あ、あの…なにようでこちらに…?」
「ん?ああ、ここ俺のサボり場所」
「え…」
この人サラッとよくないこと言った?
……っていうか、なんか見たことある…?
「で、椋名は?」
「えっなんで私の名前…」
疑問を思わず口にすると、男の子の目が見開かれた。
は?っていう感じの顔。
そして、男の子は口を開いた。
「俺ら同じクラスじゃねーの?」
今日もそこでは、今日も有名アイドルグループ“spirit《スピリット》”の曲が響いている。
「はぁ…はぁ…つっかれたぁ…!」
私はゴロンと横になった。
私は椋名雲華、私立中学校聖セーラス学園に通う中学2年生。
色素の抜けた真っ白な髪、瞳、肌が特徴なんだ。
私は「アルビノ」っていう全身の色素が抜けちゃう奇病持ちなの。
その見た目が神秘的で、アルビノの子たちは近年では捕まえられて売られることも多いみたい。
でも、逆にその見た目を利用して、私はモデルとか芸能活動に力を入れてるんだ。
なんでそんなことやってるのかって?
それは、お兄ちゃんの夢だから。
私のお兄ちゃんは、私が小学4年生の時に死んじゃった。
当時、お兄ちゃんは高校3年生だった。
先天性無痛無汗症っていう奇病を持ってて、過労で死んじゃった。
寒さと暑さを感じなかったり、あとは痛みを感じなかったりするから本当にギリギリまで気がつけなかったんだ。
お兄ちゃんは有名アイドルグループスピリットのメンバーで、世界的有名アイドルになる!」って意気込んでたんだ。
でも、それが行き過ぎちゃってこんなことに…。
それで私はその夢を託されたんだ。
だから頑張ってる。
私は自分の人生全部お兄ちゃんにかけるって決めてるから。
だけど——。
「こんなんじゃ、全然ダメだよ…」
まだまだお兄ちゃんのレベルには届かない。
どうすればいい?
こんなに頑張ってるのに…。
そんなふうに落ち込んでいると、ふとお兄ちゃんの言葉を思い出した。
『努力はな、必ず報われるんだ。報われないのは、あとちょっとの努力ができてないから。だったら、俺はもっと頑張るよ。だから、雲華もがんばれ』
そうだ。
お兄ちゃんはいつもそう言って励ましてくれてた。
こんなとこでウジウジしてる暇があったら、練習するんだ。
そうすれば、きっといつかお兄ちゃんに追いついて、さらに追い越せるんだ。
「よし、そうと決まったら、がんばるのみ!」
そうして、私はまたスピリットの曲を流した。
お兄ちゃんとは予想もしてなかった、突然永遠の別れを告げてしまった。
こんなふうに別れるつもりはなかった。
もっと話したかったし、もっと笑い合いたかったし、もっと他愛もない話をしていたかった。
だけど、もう叶わない。
もう無理なんだ。
でも、お兄ちゃんは私の記憶の中で生きてるから。
だから私がお兄ちゃんの代わりになる。
私の人生なんていらない、この人生は全部お兄ちゃんのためにある。
***
「ただいまー」
私はそう言ってから家のドアを閉める。
温かい我が家の香りが、疲れた私の体を癒してくれた。
「おかえり〜。そろそろご飯になるから」
「うん、ありがとう」
私は手を洗った後自分の部屋に荷物を置いて、すぐにリビングに行った。
リビングには勉強をしている妹の紫雨と、読書をしているお父さんの姿があった。
私は紫雨の隣に座って、スマホを取り出した。
モデルの仕事の確認をマネージャーとしようと思って。
それから確認のラインを送って、すぐにスマホを閉じた。
すると、紫雨が私をじっと見つめていたことに気がついた。
「…どうしたの?」
私は少し疑問に思ってそう聞いた。
交わされた視線の先には、私ではないなにかが移っている気がして、私は気がついた。
——あ、見てる。
紫雨も私と同じ奇病持ちで、世界で初めて現れた奇病だから治療法が全くわからないんだ。
どんなものなの?っていうと、突然見てる人の未来が色として見えるんだ。
例えば赤だったら命に関わるようなことが起きる、橙色だったらケガをしたりする、青だったら悲しいことが起きる…とか。
突然見えてしまって、もし赤色が見えたとしてなにもできないのが辛いんだって。
例えば通りすがりの人でも色が見えたりするから。
そういうのってきっと私の想像以上に辛いんだろうなって。
でも、この時紫雨は笑った。
「お姉ちゃん、このあといいことあるね」
私は首を傾げて聞いた。
「どんな色だったの?」
「ピンク。運命の出会いをする色」
「運命って…」
私はクスッと笑った。
また紫雨が傷つかなくてよかったと、少しホッとしながら。
「ご飯できたわよー。運んでちょうだい」
「はーい」
お母さんの言葉に反応して、紫雨はキッチンに行った。
運命の出会い…って、なにそれ。
私には出会いなんて必要ない。
お兄ちゃんを失ってわかった。
出会いがあれば別れもあって、誰にも出会わない方が幸せなんだって。
こんな“別れ”は一生経験したくないから。
***
あれから数日経ったけど、紫雨が言ったように“運命の出会い”は今の所してない。
いつも通りの日常、いつも通り旧校舎で練習。
そんなことを考えていると、いつのまにか一曲が終わっていた。
これ、全然集中できてない。
「はぁ…こんなんじゃダメだよ…」
私は大きなため息をつく。
私はぺたんと座り込んで、窓から見える空を眺める。
もう夏も終わりで、季節は秋。
快晴がキラキラ輝いてるみたい。
「ダンス、上手いな」
「え?ひゃ、ひゃぁぁぁ!!お、おばけ…!?」
「は?うるさ、てか失礼すぎ」
私はいきなり視界に入ってきた男の子の存在に驚いて、思わず叫んでしまった。
だって、この旧校舎は人いないもん…!
こんな突然現れるなんておばけ以外考えられないって…!!
そう思って怖くなるものの、そこに立つ男の子をしっかりと捉える。
キラキラ星みたいに輝いてる金髪に、氷のような水色の瞳、顔もちっちゃくて全部が整っていてまるでどこかのアイドルみたいだ。
そして私は彼に見惚れていたことに気がついて、ハッとする。
「え、あ、あの…なにようでこちらに…?」
「ん?ああ、ここ俺のサボり場所」
「え…」
この人サラッとよくないこと言った?
……っていうか、なんか見たことある…?
「で、椋名は?」
「えっなんで私の名前…」
疑問を思わず口にすると、男の子の目が見開かれた。
は?っていう感じの顔。
そして、男の子は口を開いた。
「俺ら同じクラスじゃねーの?」



