クールな氷の王子は無自覚地味子を独占したい

昨日の出来事が頭から離れなくて、結局一晩中ほとんど眠れなかった。

(氷室くんの腕の温かさとか……匂いとか……うぅ、思い出したら顔が熱い……!)

寝不足の重い瞼をこすりながら学園の正門をくぐると、少し先を歩く見覚えのある背中を見つけた。
黒髪に、すらっと伸びた高い背。氷室くんだ。

(あ……氷室、くん……)

声をかけようと手を伸ばしかけて、ピタッと動きを止める。
いつもなら「氷室くん、おはよう!」って普通に駆け寄れるのに、足がすくんで前に進まない。

『友達なら、これくらい平気だろ』

昨日の低くて甘い声が脳内で再生されて、私はその場に立ち尽くしてしまった。

すると、前を歩いていた冴くんが、ふと足を止めて振り返った。

「……っ」

バチッと目が合ってしまう。
冴くんは私を見るなり目を見開き、あからさまに動揺してそっぽを向いた。

「……おはよ」

「あ、お……おはようございます……!」

なぜか敬語になってしまう私に、冴くんは苦虫を噛み潰したような顔をして、片手で顔の下半分を覆った。