クールな氷の王子は無自覚地味子を独占したい

涙目になりながら縮こまっていると、ガサッと草むらが揺れた。

(ひっ……お、お化け……!?)

ギュッと目を瞑った私の手首を、誰かが強い力で掴み上げた。

「……おい、何してんだバカ」

聞き覚えのある、低くて少し怒ったような声。
顔を上げると、月明かりの下に仁王立ちする冴くんの姿があった。

「ひむ、ろくん……?」

冴くんは溜め息をつくと、足元に落ちていた私のメガネを拾って、優しく目元にかけ直してくれた。

「葵たちとはぐれて……転んじゃって……」

「……だから言っただろ。俺の目の届くところにいろって」

冴くんは屈むと、私の体を軽々と抱え上げるようにして立たせた。

「痛たた……っ」

「足、挫いたか?」

「だ、大丈夫……ちょっと痛むだけ……」

そう答えた瞬間、冴くんの大きな手が、私の手を隙間なくギュッと握りしめた。恋人繋ぎみたいに、指と指がしっかり絡み合う。

「……離すなよ」

「えっ……でも、これじゃまるで……っ」

「黙って握られてろ。お前、また転んで居なくなったら……俺が困る」

暗闇の中で、冴くんの横顔はよく見えない。
でも、繋がれた手から伝わってくる強引で温かい温度に、私の胸は壊れそうなくらい激しく打つのだった――。