クールな氷の王子は無自覚地味子を独占したい

「あ、一ノ瀬ちゃん! ごめんね、冴がなんか圧かけてたら言ってね〜。こいつ最近、一ノ瀬ちゃんのこと見すぎだから!」

結城くんが気さくに笑いかけてくる。

「見すぎ……? あ、私の眼鏡になにかついてましたか……!?」

「えっ、そっち!? いやいや、そういう意味じゃなくて……!」

私の本気の返答に、結城くんが口をぐぐっと引きつらせて固まった。

「……おい、蓮。それ以上アホなこと言ったらマジで消すぞ」

氷室くんが低く冷たい声で制すると、結城くんは「はいはい、ごめんなさーい」と爆笑しながら愚痴を閉じた。

首を傾げる私に、氷室くんはフイッとこちらに向き直ると、ポケットからまたあのいちご味のキャンディを取り出した。

「……おい」

「あ、氷室くん! さっきはパン運んでくれてありがとうね! 妹の練習なら、私いつでも手伝うからね!」

「……は? 妹の練習……?」

氷室くんが一瞬、見たこともないような呆然とした顔をした。
でもすぐに深くため息をついて顔をしかめると、ぽん、と私の手にピンク色のキャンディを乗せた。

「……アホか、お前は」

「あ、アホって言った! ちゃんと手伝ってあげるのに〜!」

「……いらねぇよ、そんな手伝い」

呆れたように背を向けて席を立つ氷室くん。
でも、去り際に一瞬だけ見えた彼の耳元が、なぜかほんのり真っ赤になっていた。

手の中に残されたいちごキャンディをぎゅっと握りしめながら、私はまだ少しだけ甘い余韻が残る教室で、首を傾げるのだった――。